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新ブログ「鍋パーティーのブログ」への移行のお知らせ

 本ブログの更新停止(といっても既に2年以上更新がありませんでしたが)と新ブログ公開をお知らせします。

 2016年1月30日、はてなブログに新たな共用ブログ「鍋パーティーのブログ」を立ち上げました。今後、本ブログは更新を行いません。

 新ブログをよろしくお願いします。

 本ブログのご愛読、どうもありがとうございました。

【kojitaken】
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「俗流の反グローバリズム」と「意識の高さ」では見えてこないもの──「グローバリズム」や「意識の低さ」を非難する前に

前回のエントリで取り上げた俗流の反グローバリズムと排外主義について、もう暫く説明しておきたい。月末には行われる都知事選にはかの田母神俊雄が出馬するそうだが、その田母神自身ばかりか推薦している面々に反TPPの論客が目立っているなど、この問題は喫緊かつ根深いものだと思うからだ。

まず、株主の「多国籍化」を指摘する者が「ヘイトスピーチ」だと極論するつもりは毛頭無い。しかし株主(に加えて資本や経営陣・従業員)が「多国籍化」することへの反発や敵意が兎角「ヘイトスピーチ」をする側から発せられている一面の事実は無視できないし、こと経済的な言説に限っても例えば中韓両国の経済的「崩壊」を煽りながら日本経済最強論を打っている三橋貴明が、その手の連中に支持されたりしている。加えてそうした「多国籍化」への脅威を煽って、例えば「外資が水源地を狙っている!日本の水が危ない!!」(水源関係の法規を熟知していればウソは解る筈なのだが)と煽っては金銭を巻き上げる詐欺的な商法まで横行する事態にまでなっているのだ。

そして、こうした「ヘイトスピーチ」を批判する側も実のところ「排外主義」的な言動をやっていたりするのも最近時に目立ったりする。例えば、かの内田樹は自著でこんなことを述べているのだ。

「国富を私財に移し替えることに熱心な人間、公共の福利よりも私利私欲を優先する人間を当の国家が全力で支援する。それが今、アメリカでも中国でも日本でも、そしておそらく韓国で起きていることの実相です(『下流志向』韓国語版序文 内田樹の研究室)」http://t.co/i2DwTwowFq

勘が良い人ならば、この主張の一端に「排外主義」を見い出すのは左程難しくは無いだろう。黒木玄氏は「最近の彼の議論は『日本は文化的に鎖国すれば良い』というテーゼに集約してしまう。これは、現在のままでの繁栄を享受し続けたい人達には心地よく響く」 http://linkis.com/blog.so-net.ne.jp/M1Vu と指摘しているが、一見してグローバル化の弊害を説きながら、その実かつての日本的社会(その中には「日本的経営」とか「日本的会社社会」も含まれるのだが)を美化する内田の言動は「排外主義」の傾向を撃つばかりか助け舟を出している様に自分は見る。そもそも内田は、日本国憲法をアメリカによる日本支配の道具と全面的に否定 http://blog.tatsuru.com/archives/001475.php し、菅首相による浜岡原発の停止をエネルギーの自立を阻むアメリカの陰謀!とまで言う http://blog.tatsuru.com/2011/05/20_0900.php 御仁だ。内田自身は「保守左派」を自称しているものの、兎角内田の言説は(『赤旗』をはじめ)「リベラル・左派」に好意的に受け止められている。でも、こういう言動の何処が「リベラル・左派」なんだろうか?

こうした「多国籍化」を否定的に見る言動が(「ヘイトスピーチ」に批判的な)「リベラル」にまで浸透し「排外主義」とも少なからず重なっていることの背景には、「日本的経営」が崩壊し多くのワーキングプアや失業者を生んでいるという「現実」もあるし、グローバルな圧力で国内の労働現場がシバかれているという「実感」もそうした言動に説得力を持たせている。しかしながら、その様なミクロやマクロの環境悪化を奇貨として労働現場をシバく様なことは、別段グローバル化が進んだ時分になって起きたことではない。かつて1970年代末頃から1980年代半ばにかけて日本製の鉄鋼・自動車や電機などがアメリカ市場を席巻し、多くのアメリカ企業で工場閉鎖や解雇が起きた。日本製品をぶち壊すと言うパフォーマンスは全米各地で行われ、日本のマスコミでも取り上げられたくらいだ(こうした「歴史」を知れば、今日本で起きていることは以前のアメリカの二の轍だということが理解できるだろう)。

こうした「日米経済摩擦」は、あることを切っ掛けとして急変する。いわゆるプラザ合意とそれに伴う円高ドル安だ。これで輸出産業が景気を引っ張ってきた日本経済は苦境に陥り、国内の下請けや地方の工場なんかでは「俺達の要求通りコスト削減などに応じなければ、お前らの仕事は海外へ持って行くぞ」と脅しをかけられたりされるのは常だった。「絶えずグローバル経営者から『日本工場はいつでもつぶすぞ』というような空気が感じられる」と言うことは、こと反グローバル化の言説で言われていたりされることだが、こうした「空気」はグローバル化以前の例えばニクソンショックや石油ショック・円高不況などでも、さらには個々の会社の経営不振によって何時でも生まれていた「空気」だったのである。その一方ではアメリカ企業が少なからず日本資本の手に落ち、下請けまで丸ごと日本企業がアメリカに工場を建てて進出したりすることもあった。不動産の買収も多く「日本はアメリカを買い占めるつもりか!?」と騒がれ、『来る日米再戦──"第二次太平洋戦争"は不可避だ』http://amzn.to/1cRr0oP って本がベストセラーになったくらいだ。

もっとも内需拡大政策という名のバブル景気により円高不況のシバきは余り目立たなくなったが、そのバブルも崩壊し大量の不良債権を抱え込んだ金融機関は貸し渋りに走った。投機に走った虚業ばかりかまともに商工業をやっていた様な実業でさえも打撃を受け、倒産が多発した。その時「救世主」として名乗りを上げたのが他ならぬ外資だった訳だが、それさえも「ハゲタカ」という非難が起きた。しかしながら外資が手を差し伸べたことに由り、多くの企業が事業を続けることが出来た事実は無視できない。「外資の助けが無ければ誰からも見向きもされずに潰れるのが好かったのか?」って問いに、どれだけの人が反論できるだろうか?

もう一つ、外資──というより「多国籍化」によって批判を受けたものがある。それが「日本的経営」だった。国内の企業集団や金融機関が互いに株式を持ち合い、経営陣に問題があったとしても(相当マスコミで騒がれでもしない限り)殆ど非難されることは無い。保養施設や研修施設が経営陣の私的別荘みたいに使われたとしても、過労死や環境破壊が起ころうと(個々の裁判で賠償金を取られたりすることはあっても)経営陣は安泰だったりしたのが常だった。それがバブル崩壊に伴い内輪で固まって無責任と批判されたり、会社本位で個々の従業員への分配は低かったりするなど、外資ばかりか市民団体・メディアにまで「日本的経営」は批判の俎上に上ったりしたのである。

こうしたバブル崩壊による「日本的経営」への批判が一方では企業批判を盛んにし「企業は社会の公器」という認識を広く世間に広めたとも言えるが、一方ではこれを奇貨として例えば一部エリート専門職への厚遇と一般労働者の非正規化とか、これまでは抑えられていた経済・労働関係の規制を緩めビジネスチャンスを創る(「起業し易い国へ!」)ということになった。それが何を齎したかは今更言及する必要もあるまい。ところが解雇一つ取ってみてもアメリカでは先任権や契約条項でかなり細かく規定や規制があるし、労働組合でさえ産別組合であったりして「同一労働同一賃金」が徹底している。欧州にしても労使に加えて政府が交えて労働条件などを取り決めていたりする。「日本は正社員の解雇が一番難しい」http://jyoshige.livedoor.biz/archives/7005871.html と城繁幸が言及しているが、実際にOECDのデータにあたると、日本は社員を解雇し易い国だったりする http://www.anlyznews.com/2013/12/blog-post_23.html?m=0 のである。

俗流の反グローバリズムや「多国籍化」への反感は、こうした問題を明らかにするばかりか覆い隠す効果しか持ち得ない。シバきや格差問題は全てグローバル化の問題として片づけられてしまい、例えば国内における労働者と使用者・大企業と中小や自営業者などに横たわる利害の対立や得失については無視されてしまう。悪いのは自分たちとは違う"余所者"ということになり、そこから「排外主義」さらにはファシズムへと至るのはそう遠くない距離にある。濱口桂一郎が、TPP反対の集会に出なかったことで不当に解雇された事例 http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2013/03/post-20e9.html を取り上げたが、俗流の反グローバリズムを信じてしまうとこうした一面は見えなくなってしまう。

最後に一点、指摘しておきたい点がある。「企業は社会の公器」ということは最近殊に強調されてはいるし、自分も頭からそれを全否定するつもりはない(前エントリで取り上げた「社会的責任投資」なんてそれが背景となっている訳だし)。しかしながら、それを矢鱈強調することで、例えば社会政策や経済政策で無ければ解決し得ない問題でさえ企業や経営陣の(最近流行の言葉を使うなら)「意識の高さ」で解決できてしまう幻想を持たせ、結果として本質的な解決を遠ざける危うさがある。例えばある集会で「企業の長期的な成長を考えないで、ひたすら労働賃金を引き下げている」 http://socialmovementunionism.blogspot.jp/2013/11/blog-post.html という発言があったが、確かに人件費の切り下げはある意味手っ取り早い企業経営の改善策ではあろう。また労働法学者の野川忍教授は以下の様に指摘している。

https://twitter.com/theophil21/status/397573047743295490

「英エコノミスト誌によれば、全世界において国民所得における労働分配率は下がり続けている。日本も、1970年後半には75%を超えていた労働分配率は、現在60%を切ろうとしている」


https://twitter.com/theophil21/status/397577765215424512

「米英も労働分配率は下がり続けているが、ドイツは70%前後で40年間ほぼ一定である。その背後には多くの要因があり、また労働分配率が高いことで経済の質の全てが測れるわけではない。しかし、少なくとも、ドイツの労働生産性の高さと労働分配率の高さとは注目に値する」


なるほど、こうした「意識の高さ」に訴えつつデータを提示して「分配率が高ければ労働生産性が良くなり企業も・・・」と主張するのは説得力を持つ。だが、好待遇によって生産性を高め企業の業績を好くするってのも「長期的な成長」を見据えたことだろうが、労働生産性を高めるには教育などの手間もあるし何より成長市場では消費者の所得が低い以上余りコストをかけずに巧い具合に経営を切り盛りしようってのも「長期的な成長」を見据えたことと言えてしまう。このブログでは「内部留保」というのも評判が悪いが、仮にも「長期的」って視点が加わると「内部留保」を批判するのは難しくなる(実際、アマゾンが数あるネットベンチャーで生き残れたのは内部留保で手元のキャッシュを多く確保したから、その後のネットバブル崩壊を乗り切れたって指摘もある)。予想しえない様な不確実な事態に備えて手許に留保分を多く所有することに就いて云々するのは、仮にも「短期的な利益」を優先する立場なら配当に回せ!ってことになるし、或いは景気がいいんだから分配しろ!ってことにもなってしまう。「短期的な利益」で企業が労働者をシバいている現状があるからとはいえ、「長期的視点」になればその状況が変わるというのは希望的観測というか幻想に近い。

「企業は慈善事業ではない」企業批判が起こる度に手垢がつくくらい使われる言い訳ではあるが、幾ら理想論を述べたところで本質的に企業は私利を追及する(ことで社会に利益を還元する)組織であると言うことを念頭に置かなければならない。近視眼的な経営を批判することも「社会の公器」であることを強調することも構わないが、しかし利益を追及する組織という本質を見失って「意識の高さ」を強調したところで、例えば古市憲寿の「牛丼やファストフードのチェーンは、じつは日本型の福祉の1つだと思います・・・・・すごく安いランチや洋服があって、あまりお金をかけずに暮らしていけます。つまり日本では企業がサービスという形で福祉を実現しているともいえる」 http://president.jp/articles/-/11364?page=4 という詭弁とかに太刀打ちは出来る筈がない。ブラック企業だろうがなんだろうが、自分に見返りがあれば「よい企業」だと思っている「意識の低い」のを非難するのは容易い。しかし、そうした問題を例えば法規制や政策の不備・マクロやミクロの経済的な要因に向かわず、ともすれば「意識」の問題に矮小化してしまうことは、現に見返りを得ている面々──それは往々にして低所得層だったりもする──を納得させることが出来ようか?いわゆるLOHASとか「意識の高い」論者が、それでどんだけ稼ぎまくっているのかを一度考えてみては如何だろうか?

【杉山真大@震災被災者】

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大企業批判は「排外主義」の罠に陥っていないか?──俗流の反グローバリズムで問題は解決できない

昨年ユーキャンがやった流行語大賞、甲乙つけがたく「倍返し」「じぇじぇじぇ」など4つが大賞にエントリーされてたそうだが、その中に「ヘイトスピーチ」というのがノミネートされていたのは余り注目されていないのかも知れない。

まぁ、在特会だの行動する何鱈などが文章にするくらい悍ましい差別的言辞を吐くのが、マスコミにまで取り上げられ流行語にさえなったのは一歩前進(?)なのかも知れないが、こうした「ヘイトスピーチ」と同様に自分たちと違うと思う連中を兎に角排除したがる性向=「排外主義」(ショービニズム)ってのは、(以前から根があったとは思うが)ここへ来て結構あちこちで目につく様になっている。

何故こんなことを指摘したのかと言えば、ここ最近大企業優遇への批判に絡ませて株主の「多国籍化」ってことが指摘されていたのが気になったのだ。曰く「外国人投資家であれば、日本の将来などどうでもよく、日本人労働者をリストラして出した利益を自分達のものにしたら、あとは使い捨ててもよい程度に考えているかもしれない」成る程。確かにそれは一面の真実ではあるのだろう。こと経済のグローバル化とかやらで大多数の人間が苦境に陥っている現実を思えば、説得力を持ったりもする。

しかし、中国・韓国と外交や領土問題などギクシャクする一方、他方で「対米追従」を非難する動きも盛んとなり、ウヨ・サヨ問わず「排外主義」の風潮が何時の間にか受け入れられつつある観がある様に自分には思えるのだ。

しかしながら、だ。そもそもその外国人投資家というのか「多国籍化」した株主ってのは、果たして誰が出した金なのかってのまで考えると、実は日本人の金でしたってのは結構あり得る話だったりする。店頭で売られていたりするファンドの目論見書とかを読むと判るが、そうしたファンドの所在地は実は日本国内で無かったってのは結構あったりするし、そういう「外国籍」の金融商品を買ったりしている金融機関やら年金基金やらも少なくない。まさにおゼニは巡り巡って一蓮托生だったりする訳だ。

まぁ、仮にそうしたことを認めた上で、だから「外国人投資家であれば、日本の将来などどうでもよく利益を自分達のものにしたら、あとは使い捨ててもよい程度に考えている」って言うのが何が悪い!ってことになるのだが、それとても果たして日本人だったらそんなに温情(?)なことをやっていたか?というのには疑問符がついてしまう。

例えば、投資相手の労働条件や環境対策など所謂企業の社会的責任に鑑みた「社会的責任投資」に先鞭をつけたのはアメリカだった。かつての朝日ジャーナルでもその「社会的責任投資」を担う市民団体が取り上げられていたが、その中には「アパルトヘイト政策をとる南アフリカとの取引」(!)って項目があり、それこそ昨日今日のぽっと出ではない時間の蓄積を感じられてしまう。そればかりか、バブル期の日本企業は「社会的責任投資」では槍玉に上がることすら多く、訴訟を起こされたり賠償金を課されたりすることさえあったのだ。

翻って日本企業を見てみよう。小泉の「聖域なき構造改革」以前の御時世では、日本企業は大概内輪で株式を持合っていて外資が割り込もうものならそれこそ官民挙げての(それも表立ってではない強かなやり方で)排除に動くのが常だった。じゃぁ、日本企業に問題は起きなかったか?公害は?過労死は?みんな日本企業で起こったことだ。もっとも「構造改革」を経てこうした状況には変化が起き、ご指摘の通り株主の「多国籍化」は進んでいる。ならば、仮にこうした「多国籍化」に歯止めをかけ日本人投資家ばかりになれば日本の将来を考えてくれるってなるだろうか?到底そうは思えない。内田樹センセ曰く「辺境国家」日本のこと、矢張り内輪の論理でなぁなぁとなり、下手すると今よりも状況が悪くなりこそすれ良くはなるとは考え難い。

昨今、世界を不幸にするグローバル化とかいう現実が多くの人々に知られてきた反動だからか、いわば反グローバリズム(ポスト・グローバリズム)とか保守左派とかの看板を纏って、欧米なら間違いなく排外主義や新右翼の主張みたいなのが結構受け入れられたりする(前述の内田なぞその典型だ)のだが、そういう人達に自分はこう質してみたい。


「あなた方が兎角非難している所謂『ブラック企業』の多くは、株主も経営陣も果てはお客様まで日本人だけなのが多数派ですけど?」

【杉山真大@震災被災者】


[編集部より]
記事へのご意見ご感想をコメント欄にお寄せ下さい。このエントリはmixiの「鍋党コミュ」の杉山真大@震災被災者さんの投稿です。
「鍋党コミュ」、正式名称「鍋党~再分配を重視する市民の会」は随時参加者を募集しております。コミュ参加は承認制ですが、必要な資格思想信条その他は一切なく、参加申請いただいた方には事実上無条件で参加を承認しておりますので、どうぞお気軽にご参加下さい。また、当ブログの記事は「鍋党コミュ」参加者でなくても投稿可能です。コメント欄に、投稿希望の旨お書き添えの上、原稿をお送りいただければ是非掲載したく存じます。コメント欄には、管理者のみ閲覧可能のオプションもございます。我こそはと思う方の意欲的な投稿をお待ちしております。

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余裕がない若者たち

2人の娘が今年、相次いで嫁に行った。
こんなに一時に行かれると、それなりに寂しいものはある。
もっとも、26歳の長女は7年前に付き合っていた男のことで私と大げんかをして家を出て行ったこともあり、カミさんは別にして私とはまったくの没交渉が続いていた。

それが去年、結婚する相手ができたといって連絡があり、同じ会社に勤めるという青年をともなって久しぶりに家にやってきた。緊張して顔色を青くしている青年が、なにやら微笑ましくて結婚を許したが、それでも娘が私と視線を交わすことはほとんどなかった。

2月に長女が結婚し、6月には次女が式を挙げた。
そして10月には2人が息を合わせたように妊娠を知らせてきた。
自分に孫ができるなんて。
心境的に、私は鳩が豆鉄砲を食ったような、そんな心持ちだった。
まあ子どもができて、「家族」がまた新たな一歩を踏み出すことは目出度いことではあるのだが。

そんなこんながあって10月の末、長女から突然、わが家に行きたいと連絡が来た。
まったく珍しいこともあるものだ。雪でも降るんじゃないかと言うと、カミさんは「そんなことを言うもんじゃないわよ」とたしなめた。

そして先週末、長女夫婦がやってきた。
カミさんは連絡が来たときから舞い上がってしまって、2週間くらい前から家の大掃除を始めて準備に余念がなかった。
掃除機の音が苦手な私にとっては、まったく迷惑なことなのだが。

それはいいとして。
私たち夫婦は長女の家を7月末に訪問している。カミさんは何度か訪れているが、私が行くのがそれが初めてだった。
料理が得意な婿さんは、腕を振るって私たちをもてなしてくれた。
とはいっても、話をするのはもっぱらカミさんと娘で、私は部屋を見回したり、2人が飼っているネコをかまったりして時間をもてあましていた。
ひとつだけ婿さんと言葉を交わしたのは、帰りがてらに「この前の選挙、投票したか?」だった。

ちょうど、駅を目指して歩いていて、街中には参院選で圧勝した自民党、安倍晋三のけったくそ悪いポスターがあちこちに貼られているのを目にしたときだった。
「いえ、投票しませんでした」と婿さんは答えた。
「ダメだよ、投票しなくちゃ。安倍だけは許せん」 そう言うと、婿さんは「はあ」と言って多少申し訳なさそうに笑った。
そういえば、娘たちの狭い部屋には新聞もないようだったな、と思った。
いかんな、そんなじゃ。

で、今回の来訪だ。
娘が妊娠して初めて会うこともあり、私はこれだけは言っておこうと思っていた。
「これから日本はますます暮らしにくくなり、悪い時代が20年、もしかしたら30年と続くかもしれない。そんななかで子どもを育てるにはよほど注意しなければならない。お前たちは、絶対に子どもを守ってやるんだぞ」
婿さんは真面目な顔つきで「はい、守っていきます」と答えた。
私は、今の社会がどれほど危なっかしくて、しかも悪い方へ悪い方へ向かっていることを話したかったが、カミさんは娘の出産をアドバイスすることに一生懸命で、そんなときに政治や社会について話すのは野暮ちんというものだった。

しかし、話しをしていると、娘夫婦の生活が非常に厳しい状態にあることが分かってきた。
週5日、ときには6日働いても給料は僅かだという。娘は正社員だが、婿さんは派遣社員で、あまりに給料が安いので来年は転職を考えているらしい。
「これから転職といっても、かなり難しいだろう」
「はい、でも今のままじゃやっていけないので」
実際の給料がいくらなのかは聞かなかったが、年3ヶ月分のボーナスが出るからやっと暮らせる程度で、貯金をする余裕はないという。
「それじゃあ子どもが生まれたら大変だ」
娘が産休に入ったら生活はどうなるのか。婿さんも必死だろう。
「それに、今は拘束時間が長くて」
朝8時の始業の前、7時半には仕事場にいなければならないため、2人とも5時台に起きて支度をし、6時には家を出なければならない。そして終業して買い物をし、食事をするともうぐったりで、明日の仕事のために寝なければならない。休みの日にはただひたすら体を休める。そんな毎日で、とても新聞など読んでいる余裕はないのだそうだ。
そりゃあ大変だ。
新聞くらい読めとはとても言えない。

疲れてテレビもあまり見ない、パソコンもやらない。
それではどこから情報を得るのか。
2人が社会に無頓着で、投票にもほとんど行っていないというのには、そんな下地があったのだ。
しかし、ギリギリの収入でこき使われているのも、元を正せば政治と社会が悪いからだ。
若者たちが労働に疲弊して社会のことなど考える余裕がない、労働環境が悪いといっても周囲を見回せば自分たちとそれほど違わないから文句も言えない。
かくして経営者たちは物言わぬモルモットたちを機械のように働かせ、為政者たちは自分らに都合のいい社会を作っていく。

危ないな、あまりにも危ない。
娘たちのような若者が、社会に目を向けようとしないのは、あまりに危険だ。

生まれてくる子のために、親はどんなことがあっても守ってやらなければならない。私がそう言ったのは、今後も成果至上主義つまりは新自由主義は改まることはないだろうし、自民党政権は日本を戦前社会のような暗黒時代に導こうとしている。そんな状況から守ってやらなければならないという気持ちからだった。
秘密保護法が施行されて国民の知る権利が奪われ、個々人の行動が公益に反していないか監視されるようになり、さらには集団的自衛権が解釈改憲されてやがては軍事国家になっていく。
安倍晋三が政権を取り、そんな道筋がうっすら見えてきた。
もし、自分の子どもが徴兵されるような世の中になってしまったらどうする。
そうなってしまってからでは遅すぎる。
これから20年、30年たって、子どもが成人し大人になった頃、悪政は彼らを直撃するだろう。これは決して冗談じゃない。
そうならないために、親は社会に目を向け、政治を監視し、無法な経営者たちにNOを突きつけていかなければならない。物言う大人として選挙では必ず投票し、正しい判断を示していかなければならない。残された権利を徹底的に行使していく必要がある。

そんな私の気持ちを、彼らは受け取ってくれるだろうか。
「またうるさい、面倒なことを言って」
以前の対立から私を許しきっていない娘はそう思うかもしれない。
婿さんは生真面目な性格のようだが、どう見てもノンポリだ。
そんな2人に対して、今、親として私にできるのは何か。私もまた彼らを守ってやる責任がある。

「今度、彼(婿さん)だけでもどこかに呼んで、じっくり話し合おうかな」
私はカミさんに言った。カミさんには娘たちが帰った後、私が何を話したかったかを伝えてある。
「そうねえ……」
言葉を濁すカミさんもまた、彼らを心配し始めている。
しかし、結論はまだ宙に浮いたままである。
政権が右に舵を取り、社会保障を切り捨てて着実に国民の生活を追い詰めていっている今、私たちがためらっていられる時間はそれほど多くはないのだが。

【タツ】

[編集部より]
記事へのご意見ご感想をコメント欄にお寄せ下さい。このエントリはmixiの「鍋党コミュ」のタツさんの投稿です。
当Nabe Party では mixi「鍋党コミュ」ないで税政に関するさまざまな議論を活発に行っております。その成果結果(OUTPUT)を当ブログに掲載しています。ぜひあなたもmixi「鍋党コミュ」に参加して、一緒に議論に参加してみませんか?小さな政府論はおかしいと思う人は、ぜひご参加ください。そして現在の「強者への逆再分配税制」を改めていきませんか?お待ちしております。

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国際競争力のペテンと雇用破壊(後編)

先週の続きです。もし読まれていないのなら、こちらを最初に読んでから以下をお読みください。

・国際競争力のペテンと雇用破壊(前編)

5. 法人税が海外移転の主な理由ではない
ことあるごとに「日本の法人税が高いから企業が活動しにくい」という発言がある。以前当ブログで取り上げた下記のものがその典型例だろう。

・NHKスペシャル「シリーズ日本新生 決断間近! どうする?消費増税」

中空麻奈氏(BNPパリバ証券投資調査本部長)
ユーロ危機の中で、ギリシャ・アイルランド・ポルトガル・スペイン・イタリアなどあるのですが、唯一アイルランドだけは回復過程に入ってます。なぜかというと法人税を12.5%と低いところで抑えたからなんです。
これは企業が国際競争力を持つことが出来たから、税収が上がったからです。


「国際競争力のペテン」については前回 4.で説明したが、過去のエントリでも別な角度から取り上げているのでぜひもう一度目を通してほしい。

実際に日本の企業が海外投資を行う主な理由を調査した資料がある。

経済産業省の
・第42回海外事業活動基本調査結果概要
-平成23(2011)年度実績-

によれば、
・Ⅱ.今回調査のポイント

12.投資決定のポイントについて
・2011年度の投資を決定した際のポイントをみると、「現地の製品需要が旺盛又は今後の需要が見込まれる。」と回答した企業の割合が7割強と最も高い。これに続き、「納入先を含む、他の日系企業の進出実績がある。」、「進出先近隣三国で製品需要が旺盛又は今後の拡大が見込まれる。」、「良質で安価な労働力が確保できる。」となっている(23図)。
・この上位4位の要因を時系列でみると、「現地の製品需要が旺盛又は今後の需要が見込まれる。」、「進出先近隣三国で製品需要が旺盛又は今後の拡大が見込まれる。」にみられるように今後の需要拡大等が見込まれることを投資の決定ポイントとする割合は、高くなってきているが、「良質で安価な労働力が確保できること」を投資の決定ポイントとする割合は、低くなってきている。

投資決定のポイント2011

   図23 投資決定のポイント


つまり、日本より「現地(もちろん中国やインドも含まれると思うが)の製品需要が旺盛(73.3%)」が7割である。「良質で安価な労働力が確保できる(23.5%)」が2割で、「税制融資等の優遇処置がある」がおそらく法人税に相当するものだと思うが1割弱である。このことから見ても、上記の中空麻奈氏の発言に説得力はない。

気になるのは「良質で安価な労働力が確保できる(23.5%)」とあるが、つまりグローバル企業からすれば、日本だろうが、中国だろうが、インドだろうがとにかく安い労働者を使うことができればそれに越したことはない。だから、日本では少しでも労働者を安く使うためにこれだけ非正規雇用が増えたのであって、このような企業の(不純な?)動機の結果によるものである。ただし、この項目については年々ポイントを下げており、2004年は46.7%であったが、2011年では23.5%である。それだけ日本と他国の労働者賃金の足の引っ張り合いは限界に達してきたと企業も気がついたのだろうか。

もうひとつ企業が海外で現地法人税を気にしなくてもよい理由があり、それは「外国税額控除」という聞きなれない優遇税制である。

・法人実効税率のごまかしと法人所得課税
政府税調答申、経団連提言を斬る

②外国税額控除
外国で払った税金を日本の決算申告時に控除できるという制度、自分が支払っていない税金も控除できてしまう間接外国税額控除やみなし外国税額控除も含まれており、大変不公平な大企業優遇税制です。三菱商事は07年3月期に399億26百万円の減税になっています。


このような優遇税制があるため、現地での法人税率など企業にとってはあまり気にしなくてよいのかもしれない。

6. 増え続ける内部留保
このように現場の労働者は安い賃金で仕事に追われているのだが、資本金10億円以上の大企業は巨大な内部留保を溜め込んでいることがわかっている。

・日本の大企業は、この10年で100兆円ため込んでいる

先月、国税庁が発表した「民間給与実態統計調査」によると、平成24年分の一人当たりの平均給与額は、正規雇用者が468万円(3,012万人)、非正規雇用者が168万円(988万人)。合算すると給与所得者の平均給与額は408万円となり、平成23年分より1万円減少した。

アベノミクス以前のデータなので、給与が前年より下がっても仕方がないと思いがちだが、反対に日本の大企業の「内部留保」は、年々増え続けているのだ。

駒澤大学経済学部教授の小栗崇資氏が解説する。まず、内部留保とは何か。

「企業は製品やサービスの売り上げから原材料費や賃金などの経費を差し引き、利益を計上します。内部留保とは、その利益から税金と株主への配当金を払って残った利益剰余金などを総計した、要は企業の儲けの蓄積のことです」

利益剰余金のほか、将来の支出や損失に備えるため、主に貸借対照表の負債の部に繰り入れられる「引当金」、新株発行などの資本取引によって増資し、発生した「資本剰余金」、これらを累計した数字が一般的に「内部留保」とされる(出典:財務省「法人企業統計年表」、国税庁「民間給与実態統計調査」)。

「利益剰余金だけを見ると、2011年度は141.3兆円でした(資本金10億円以上、大企業5806社)。10年前(2001年/84.7兆円)の約1.7倍。高度成長期だった30年前(1981年/19.8兆円)までさかのぼると約7倍です」

(中略)

そもそも、膨大な内部留保はどのようにして積み上がったのか?

「ひとつは人件費の削減です。2001年から2011年にかけ、従業員給付は52兆円から51.4兆円に、従業員ひとり当たりの賃金は454万円から409万円に減少しました。私の試算では、仮に2001年の従業員給付が維持されていた場合に必要となっていたはずの資金は10年間で21.1兆円。つまり、同じ10年間の利益剰余金の増加分は56.6兆円ですから、実にその約4割が人件費抑制分から留保されたとみることもできます」

また、もうひとつ内部留保を膨れさせた“財源“がある。

「それは法人税の減税です。消費税が5%になった2年後(1999年)に40%から30%に減税され、企業の税負担は9.6兆円も減りました。大手企業はこの減税分の大半を内部留保に転化させたのです。今回も消費税とセットで法人税減税が検討されていますが、減税されても同じことの繰り返し。内部留保が膨れ上がるだけでしょう」

(中略)
労働者の平均年収と内部留保
   図:労働者の平均年収と内部留保


つまり消費税増税は法人税減税のためだから、おかしなことになる。
日本国民は「国際競争力」などというもっともらしい言葉に煽られて、過去に何度も同じ手にひっかかるのは、哀れとしか言いようがない。

以前、タックス・ヘイブンについて書いたが、そこに寄せられたコメントによるとイギリス領ケイマン諸島への日本の投資残高が2012年末、55兆円もあることがわかったそうだ。

・日本の投資残高55兆円/租税回避地(タックスヘイブン)ケイマン諸島・・・今日の赤旗

このようにどこかでお金の流れが止まってしまえば、消費が落ちるし税収も上がらないのは当然だろう。

ポール・クルーグマン「さっさと不況を終わらせろ」より

あなたの支出はぼくの収入であり、ぼくの支出はあなたの収入になる、という事実だ。
そんなの当たり前では?でも多くの影響力のある人々は、これが理解できない。

きっと経済学者の竹中平蔵もこれが理解できていないか、理解したくない人の一人だ。

7. まとめ
自分の工場の生産ラインで不良品の山を前に「これが全部良品だったら俺たちの給料は倍になるよね」などとラインの作業者と話したものだ。給料倍は大げさだが相当な額の不良を出してしまうことは、どこの工場でもあることだろう。その製品の種類にもよるだろうが、たとえば、部材が変わったり製造プロセスが変わったり、ちょっとしたことで製品の品質が決まってしまう。本来であれば、何が原因で不良になったのか、きちんと突き止める必要があるが、何せ不良解析する人手が少なくて手探りで製品を出荷しているような状態だ。
それというのも人件費を圧縮したせいで、人が辞めたらやめっぱなしだし、以前書いた契約社員5年雇止めの問題で、早々にラインのベテランの女性作業者が退職していってしまった。こんなことでは製品品質を維持するのは相当に苦しいし歩留まりも良くならない。

人手が足らない=>不良が出る=>人手が足らなくて解析できない=>不良が改善しない。損失が増える=>(悪循環)

この悪循環から抜け出さなくては、日本工場がつぶれるのは時間の問題だと思う。うちの工場は設備投資も予算がないということでろくにしない。日本の工場はこのままでは新製品の開発もろくにできなくなり、歩留まりの改善もこのままうまくいかなくなればグローバルでの役目を終える。

日本企業は人件費を削るのではなく、必要な人材を投入して長期的な成長力を維持していかなければ、日本の製造業は近い将来取り返しがつかなくなる。安倍晋三・竹中平蔵コンビの行おうとしている「産業競争力会議」とは、労働者を食い物にして短期的な儲けだけを追い求め、株主に還元するものである。そしてこの株主とは外国人投資家の割合も多く、以下は外国人投資家が保有している株式の割合である。以前も紹介したが、

・株主も「多国籍化」より
日立製作所  38.0%
ソニー    36.3%
武田薬品   24.9%
三井不動産  47.7%
日産自動車  68.6%

さらに中国は日本株を大量に買い漁っている状態だ。

・尖閣で関係悪化後も3兆円投資 中国政府系ファンド、日本株買い継続

外国人投資家であれば、日本の将来などどうでもよく、日本人労働者をリストラして出した利益を自分達のものにしたら、あとは使い捨ててもよい程度に考えているかもしれない。
安倍晋三・竹中平蔵コンビはそのお手伝いに日々精を出しているようだ。結果として、日本の労働資源は枯渇し、日本の長期的な成長力をさらに弱めてしまうだろう。

【Takky@UC】

[編集部より]
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テーマ : 税金
ジャンル : 政治・経済

国際競争力のペテンと雇用破壊(前編)

今回は国際競争力の名の下に雇用破壊を続ける安倍内閣について、自分がグローバル企業の製造現場を10年見てきた立場から考えてみたい。

1.リストラの実態
先日半導体工場でリストラにあっているという人とお会いして、リストラについて話を聞いてきた。
それによると「今の職場にあなたの活躍する場所はない」などと上司や人事から面接で言われ、派遣会社を紹介されるという。すると派遣会社の担当者は「まだまだあなたの活躍する場所はありますよ」などと巧みに誘い、派遣先を紹介するそうだ。
派遣会社といえばパソナが有名で、その取締役会長である竹中平蔵について最近以下の記事が出ている。

・竹中平蔵が画策 「解雇特区」構想でサラリーマンは奴隷化必至


(中略)
「産業競争力会議」は、解雇特区をつくれば企業が従業員を雇いやすくなり、雇用が生まれるなどと喧伝しているが、特区にそうそうたる「ブラック企業」が集結し、いずれ日本全体がブラック企業化するのは目にみえている。

「特区構想は、対象を大都市に事務所を構えるベンチャー企業に限定するとしています。しかし、拡大されるのは確実です。派遣社員だって、最初は限定されていた。それに対象は創業5年以内の企業としているが、古い企業が別会社をつくるなど“抜け道”はいくらでも考えられる。もともと安倍首相は『世界で一番ビジネスしやすい国にする』と宣言し、経済界の要望を無批判に受け入れてきた。恐らく特区を突破口にして、社員を簡単にクビにできる国にするつもりでしょう」(筑波大名誉教授・小林弥六氏=経済学)

<どんなに企業儲けさせても景気は上向かない>

「解雇特区構想」を強力にプッシュしているのは、「産業競争力会議」のメンバーである竹中平蔵だ。

 小泉政権で実現できなかった日本改造を、安倍政権で推し進めるつもりでいる。しかし「市場原理主義」の竹中平蔵に勝手をやらせたら、日本はどこまでも格差が広がってしまう。

「強いものを強くする、企業の利益を最優先する、という市場原理主義では景気は回復しないことは、小泉政治の失敗が証明しています。GDPの6割は個人消費なのだから、どんなに企業を儲けさせても、労働者の賃金が増えなければ景気は上向かない。安倍首相は、サラリーマンの懐が温かくなるようにするべきです。なのに、消費税増税で国民から8兆円を吸い上げ、法人税を減税しているのだから話にならない。そのうえ、解雇特区を導入しようなんてどうかしています。なぜ、ブラック企業がやるようなことを政府がやるのか」(小林弥六氏)

「解雇特区」の導入など絶対に許してはいけない。こうなったら、安倍首相と竹中平蔵をまとめて叩き潰すしかないのではないか。


つまり、バンバン正社員を減らして、派遣会社が儲かり企業がまともに給料を払わないブラック社会を竹中平蔵は目指しているようだ。

2.安倍晋三の「雇用が60万人増えた」のペテン
こうした激しいリストラはいたるところで行われていると思ってよい。
電機・情報ユニオンによれば20万人近い人たちが人員削減の対象となっていると伝えている。

・リストラ情報

電機労働者懇談会(電機懇)は、2013年10月9日現在の調査を行ない、124企業・職場の社員数148万6417人のうち、公表されただけで19万1891人が人員削減の対象となっていることを明かになりました。


しかし、こうした事実があるにもかかわらず、安倍総理は60万人の雇用が増えたと言ったそうだが、その内訳は以下のようである。

・首相「雇用60万人増」というが増えたのは非正規社員
志位氏 正社員が当たり前の社会を

安倍晋三首相は雇用問題にふれ、「5月、前年同月比60万人の雇用が増えています」と胸を張りました。
 総務省「労働力調査」によると、確かに昨年5月から今年5月にかけて、雇用者は62万人増加しています。
 しかし、その内実は非正規雇用労働者の増加によるものです。
 正規労働者をみると、昨年4~6月期平均の3370万人から、今年5月には3323万人と47万人減少。一方、パート・アルバイト、派遣などの非正規雇用労働者は、同期で1775万人から1891万人へと116万人も激増しています。


つまり、雇用が増えたといっても、正社員が上記のようにリストラや企業倒産などにあい、次の正社員での仕事が見つからないために、派遣や契約社員などの非正規雇用に転換させられた労働者が多いのではないだろうか。
総務省統計局の最新の発表によれば

・労 働 力 調 査 (詳細集計)
平成25年(2013年)4~6月期平均(速報)

1 雇用形態
 ・正規の職員・従業員は3317万人と,前年同期に比べ53万人の減少。2期連続の減少。非正規の職員・従業員は1881万人と,前年同期に比べ106万人の増加
 ・役員を除く雇用者に占める非正規の職員・従業員の割合は36.2%と,前年同期に比べ1.7ポイントの上昇。2期連続の上昇

雇用形態別に見た役員を除く雇用者の推移
  雇用形態別に見た役員を除く雇用者の推移

2 現職の雇用形態(非正規の職員・従業員)についた主な理由
 ・男性の非正規の職員・従業員(603万人)のうち現職の雇用形態についた主な理由を「正規の職員・従業員の仕事がないから」とした者が168万人で30.7%
 ・女性の非正規の職員・従業員(1278万人)のうち現職の雇用形態についた主な理由を「家計の補助・学費等を得たいから」とした者が331万人で27.5%

現職の雇用形態についた主な理由別非正規の職員・従業員の内訳
現職の雇用形態についた主な理由別非正規の職員・従業員の内訳 (2013年4~6月期平均)


となっている。先ほどの半導体工場のリストラにあっている彼の話だと、関東の工場に勤めていて退職した場合、自分の実家のある地方に戻ろうとしても正社員の仕事はなく、パソナなどの大手派遣会社の紹介で派遣になるしかないと言っていた。しかし、彼は高校生と大学生の子供がいるから、絶対に派遣にはなりたくないからと、会社のリストラに対して抵抗を続けていいる。同じようにリストラに屈せず会社に残った人たちは、40代の子育て中の人や家のローンを抱えている人たちだそうだ。それに年齢も40を過ぎればいまと同じ収入のある転職先を見つけることは難しい。これは現代の「農奴制」とも言うべきものではないだろうか。

3.一度非正規雇用になれば抜け出せない
このようにリストラや病気、家庭の事情など何らかの形で正社員から非正規雇用になる人は多いだろう。ぼくも病気が元で非正規雇用になったひとりだ。そして一度でも非正規雇用になれば、二度と正社員に戻れなれないように安倍内閣は法の整備をちゃくちゃくと進めている。

・正規雇用10年まで更新へ

政府は、雇用分野の規制緩和の一環として、非正規労働者が同じ企業で5年を超えて働いた場合、希望すれば期限のない雇用契約に切り替えることを企業に義務づけた労働契約法について、非正規で雇用できる期間を10年まで更新できるよう改正を目指す方針を固めました。
 政府は、大胆な規制緩和を行う「国家戦略特区」の創設にあたって、雇用分野も対象にすることを検討してきましたが、全国一律の規制を求める厚生労働省が難色を示していたことから、安倍総理大臣や新藤総務大臣ら関係閣僚が、16日会談し、対応を協議しました。
 その結果、企業の競争力を強化するためには、雇用分野の規制の緩和を進める必要があるとして、当初の方針を転換して、国家戦略特区ではなく、全国一律に規制緩和を進める方針を確認しました。
 そして、非正規労働者が同じ企業で5年を超えて働いた場合、希望すれば期限のない雇用契約に切り替えることを企業に義務づけた労働契約法について、非正規で雇用できる期間を10年まで更新できるよう改正を目指す方針を固めました。
 また、労使間の紛争を防ぐため、政府が過去の労働裁判の判例を分析し、解雇が認められるケースなどの目安をガイドラインとして、企業に示すとともに、企業向けの相談窓口を設ける方針を確認しました。


つまり、管理職以外はみんな非正規のブラック企業だらけになるとかそういう社会でも現政府は目指しているようだ。
最後にさらりと「解雇が認められるケースなどの目安をガイドラインとして、企業に示す」と書いてあるが、これはつまり企業に対して「こういう場合は解雇しても法律に抵触しませんよ」と解雇事例集(首切り事例集?)を政府が作ってあげるから安心してくださいというひどいものであるから注意したほうがいい。
このような影響は新卒の大学生にも出ていて、人生これからという若者が命を絶つのは耐え難いことだと思う。詳しくは以下のリンクを参照してほしい。

・就活自殺は5年前の3.3倍増、就職失敗による大学生の自殺率は日本平均の2.6倍にものぼる

以前も当ブログに書いたが、経済の再生は中流層復活がなければならない。ここでまたくどくど説明するのではなく、以前のブログを再び読んでいただければ良いと思う。

・今必要なのは中流層の復活だ!

ニューヨークタイムズの話題論文を全文翻訳ーーロバート・ライシュ「没落した中流階級の再生なしにアメリカ経済は復活しない」
少数の金持ちに依存する経済は弱い



4.国際競争がペテンな訳
そもそも、国際競争で日本が勝ち残るために規制緩和をするという話がでてきて、そのためには1.で述べたような「産業競争力会議」という名の「解雇特区」を作ろうという話になる。
グローバル企業における国際競争とはそもそもどういう意味なのだろうか?グローバル企業とはいうまでもなく多国籍企業といういくつもの国で事業を行う企業のことである。
自分の勤めている工場は全世界で7つもの工場があり、主にアメリカ、日本、中国、韓国、インド、ヨーロッパ数カ国である。この中で日本の工場の位置づけは、流れを追って説明すると、

1.新製品開発によってプロトタイプ(試作品)を技術部が作る
2.量産できるように生産ラインを作る
3. ある程度製造ノウハウがたまると中国・インド・韓国に生産ラインを移転する。


ぼくは主に中国・インドへの生産ライン移転などの仕事をやっている。
日本工場は絶えず新製品開発をしていかなくてはならない立場にある。それに2~3年かけてやっと製造ノウハウがたまって、歩留まりも改善し、いざこれから儲けが出るぞというときになって、中国やインドの技術者が来て製品を移転してしまう。
さらに言うと、日本で開発したものを中国・インドで生産すれば、当然最初は不具合がたくさん起こるしそうした面倒見も日本が行っている。インターネットが高度に発達したおかげで、自分のPCから社内LAN (VPN) を使って中国やインドの工場生産ラインのコンピュータのプログラムを手直ししたり、製品データを引っ張ってきて歩留まりを解析することも可能だ。だから、わざわざ日本人技術者が現地に行くことは、よほどのことがない限りないし、中国・インドの現地の技術者も最小限の人数にすることができる。
そして厄介なのが、中国・インドでの生産が遅れたり歩留まりが悪ければ「日本工場の対応が悪い」というグローバルの評価がついてしまう。各国の工場の人件費はドルで換算しているから、多少円安になったところで「何で日本人の給料はそんなに高いのだ!」とたたかれまくっている。おかげで日本人の技術者は一人でものすごい製品数を担当させられて、どこのグローバル企業の技術者も青息吐息という感じではないだろうか。無情にも新製品開発のサイクルが止まったら、日本工場はお払い箱である。
ついでに言うと、基幹となる特許はアメリカ本社のものをライセンスしてもらっているから、日本で作ってもライセンス料はアメリカ本社に払わなくてはならない。はっきり言ってグローバル企業の中で日本工場は踏んだりけったりという状況がわかってもらえるだろうか?

今説明したように、あたかも日本は全世界の国々と国際競争を争っているかのような政府の発言は、グローバル企業にはあてはまらない。せっかく日本で血道をあげて開発・量産化したところでそれは中国・インド・韓国に持っていかれるのだから何を競争しているのかわからない。これがぼくが「国際競争なんてペテンだ」という理由だ。もちろんこれは、ぼくのグローバル企業で仕事をする中で得た経験から話をしているから異論もあるとは思うが、少なくともこういう一例があることは確かだ。

今週は長くなったので、ここまでとさせていただきます。次週は
5. 法人税が海外移転の主な理由ではない
6. 増え続ける内部留保
7. まとめ

について、書く予定です。

【Takky@UC】

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テーマ : 労働問題
ジャンル : 政治・経済

NHKスペシャル「シリーズ日本新生 決断間近! どうする?消費増税」

9月15日にNHKで放送された
討論
シリーズ日本新生
決断間近!
どうする?消費増税

では、来年4月に消費税率を現在の5%から8%に引き上げることに対して生放送で討論を行った。
以下は、番組中で自分が疑問に思ったことをメモした。

1.アベノミクスは好調?
番組ではアベノミクスの円安の影響により自動車の輸出が好調なことから売り上げが伸びているそうだ。ある輸送会社ではリーマンショック以降出てなかったボーナスが出るなどアベノミクスの効果を強調している。
その一方で、円安の影響で食品やガソリンの物価が上がり生活が苦しくなっている人たちも多い。
ぼく自身は医療機器メーカにいるのだが、アジア市場がまったくダメでアベノミクスの効果など「焼け石に水」という感じだ。

NHKの世論調査によると、景気回復の実感は
・感じる 14%
・感じない 44%
・どちらともいえない 38%
だそうだ。つまり8割くらいの人たちにとってアベノミクスの明確な効果は感じられないという結果だろう。これについて甘利経済再生担当大臣は

どうしてもこれは順番がありまして、日本全国一律にどんと(いっきに)アベノミクスが浸透するということは出来ません。どうしても金融業績で言えば、改善していくのは大きい企業から先ですし、輸出企業から先です。地域で言えば都市部から先で、地方はタイムラグがあります。
大事なことはタイムラグをなくすためにいろいろな対策を打っていくことです。


ここで甘利大臣は「大企業・輸出企業が潤えば日本全体が潤う」と言っている。
しかし、日本は大半の人が信じているより輸出への依存度(貿易依存度)は驚くほど低いことをご存知だろうか?

総務省のデータによると
9-3 貿易依存度 (エクセルシートの9-3というタブより)
外需依存度表
である。
つまり、韓国(49.9%)やドイツ(41.3%)より日本の輸出依存度(14.0%)はかなり低い。さらにアメリカ(9.8%)は1割も輸出依存度がない。
甘利大臣が言うような輸出企業が日本を支えているというのは、いったいどの数字を見ていっているのだろうか?
この数字を見る限り、日本もアメリカも内需依存国にしか見えない。

2.雇用者の数は増えている?
熊谷亮丸氏(大和総研チーフエコノミスト)

アベノミクスに対する典型的な批判は、円安で輸入品の値段が上がってしまう。他方で給料が上がらないので国民の生活が苦しくなる。しかし、これは先ほど甘利大臣が言われたように時間差の問題だと思います。(中略)先ほどのVTRのように上がっているのはボーナスだけではなく、雇用者の数が非常に増えている。私どもの懐に入る賃金の総額というのは、一人当たりの賃金に雇用者数をかけたものです。一人当たりの賃金は水面ぎりぎりですが、今雇用者数が急増しています。実は4~6月で見ると前年比で給料は1% くらい伸びています。
これはリーマンショック前以来の伸びですから、日本経済は着実に回復にあります。


雇用者数が増えていると言っているが、それは非正規雇用者が増えているだけである。2013年には非正規比率が男20.9%、女55.4%と男女とも過去最高を更新している
そしてこの数年間の電機メーカのリストラは18万人程度もおり、さらにアベノミクスでは「限定正社員」を導入しようとしている。正社員をこの「限定正社員」に置き換えて人件費を削減し、仕事がなくなれば解雇できる状態を作ろうとしている。
このような状態で、熊谷氏の言う「日本経済は回復している」は説得力に欠ける。

3.社会保障と税の一体改革
清家篤氏(元社会保障制度改革国民会議会長・慶応義塾長)

今回の社会保障制度改革の中には、低所得者の社会保険料の負担を軽減する改革も含まれています。そういう面では、消費税の増税に伴う逆進性の問題を緩和する部分もこの社会制度改革の中にはあります。


いま、国民健康保険は大変なことになっている。
「国保より五輪」猪瀬知事方針で 国保料2万円から16万円の暴騰

・納付通知を見てびっくり
東京都の国民健康保険料が暴騰している。今期の保険料について「納付通知」が届くころだが、東京23区では前年度2万円だった人が、16万円もの値上がりに悲鳴を上げているという。18日「赤旗」が伝えた。
・区町村への支援額を1/8に減額
暴騰の原因となったのは、都による区町村に対する独自支援の減額。320億円あったものが、今年度は43億円とほぼ1/8に激減させた。
(中略)
・東京五輪競技場の新設・増改築に1300億円
東京都にお金がないわけではない。石原・猪瀬知事が招致に異様な情熱を燃やす「2020年東京五輪」の予算は潤沢だ。
五輪開催に向け積み立ててきた開催準備基金も約4000億円にのぼる。これを国保に回せば、10年は暴騰を避けられる。
(中略)


オリンピックに数千億円使い、もう一方では支援金を280億円近く減らして、国保料を8倍にあげるという。オリンピックというのは、まず自国民が健康でなければ意味がないと思うのだが、このような税金の再分配はオリンピックの精神に反していないのだろうか。このような国がオリンピックをやるにふさわしいといえるのだろうか。
このような事実があるのに「消費税が上がれば逆進性が緩和され、社会保障が充実します」などといわれて、誰が信じるだろうか。

4.日本の法人税は高く消費税は低い?
熊谷氏

私は法人税の減税をすることがきわめて重要だと思っております。いま、世界の潮流で言えば、消費税を上げて税収を安定させて、他方で経済を活性化させるために法人税を下げるというものです。
(中略)
国際比較で見るといま(日本の)法人税は高すぎるんですね。日本はだいたい35%。他の国は20%代半ば。他方で消費税はEUの国では15%以上です。日本の国は消費税が低すぎて、法人税が高すぎる。


これは以前から当ブログで取り上げている。詳しくは以下の過去のエントリーを全文目を通してほしいが、ポイントだけ引用する。
法人税(1) 日本の法人税はそんなに高いのか?

「大企業の実際の実効税率」に示されているように、
・三菱商事 8.1%
・三井物産 9.3%
など、およそわれわれが想像していた「日本の法人税率は40%」のイメージから乖離しているようなものまである。
これにはいろいろな控除があるためだ。

試験研究費税額控除
外国税額控除
受取配当益金不算入

くわしくは、先ほどのリンク先を参照してほしい。そのうち(みなし)外国税額控除については別途本ブログで取り上げてみたい。
付け加えておくと、三菱東京UFJや三井住友、みずほなどの大銀行が、2004年以降、赤字分を次年度以降に繰り越して黒字分を相殺する優遇税制によって、法人税ゼロになっていることも問題だろう。


法人税というのはそもそも黒字企業のみが払っており、黒字申告割合が3割を下回っている(国税庁)なかでの法人税減税は、数少ない強者の大企業をますます強くしているだけではないか?法人税減税した分の企業の利益は、企業内部留保や株主配当などに消えるだけで、労働者(特に非正規労働者)の給料があがるとはだれも確信できないだろう。

番組中で清家氏は

これまでもかなり企業が成長したときに、十分に賃金に分配されてこなかった問題があることは確かです。それがデフレを深刻化させてきました。今回はぜひアベノミクスで企業の収益が高まったものをきちんと賃上げにまわすようにし、もちろん賃上げは民間の労使がやることですが、政府も少しコミットして話し合いの場にはいるとか、賃上げした企業に減税するとか。あるいは実は政府ができるいちばん手っ取り早い策は公務員の給料を上げるということです。


と、過去の企業の犯した過ちを認めているし、政府が出来るもっとも直接的な景気対策は「公務員給料を上げること」と認めている。つまり、法人税減税は直接的な景気対策とはいえない。

つぎに日本の消費税の税率についても、過去のエントリーを参照していただきたい。
消費税(2) 日本の消費税率5%は低い?

日本の消費税収構成比が32.8%(2010年度)もあるなんて、付加価値税標準税率25%もあるスウェーデンの税収構成比36.5%(2007年)と大して変わらない。
こんなにも日本の消費税収負担が大きいのに、日本はスウェーデンのように大学にただでいくことすら出来ない。何かおかしいと思わないだろうか?同じ税負担ならおなじ政府サービスを求めてもよいのではないか?


5.大企業にやさしく、庶民に厳しい
番組に寄せられた意見の中にも「大企業優遇で、消費税を負担する庶民の家計への配慮がない」というメッセージがたくさん寄せられた。
それもそのはず、今までの消費税増税分は下のグラフのように、法人税減税の穴埋めに使われてきた事実があるからだ。
消費税は19%に増税して、その分法人税は25%に減税して頂戴という身勝手経団連のトンデモ提言
消費税と法人税
番組では出てこなかったが、消費税還付金というものがある。
消費税というのは日本国内の消費に関して課税するから、海外に輸出する場合は免除される。詳しくは下記のエントリーを参照してほしい。
消費税還付とは? その1
消費税還付とは? その2
つまり、輸出企業は消費税率が上がれば上がるほどこの消費税還付金が受け取れるが、下請け企業は消費税分うまく価格転換できなければ泣き寝入りとなることもある。それが証拠に2009年度の国税滞納額、7.478億円のうち消費税の滞納は、3,742億円で50%を占めている。
このようなことがなくなるようにインボイス制度を導入しなくてはならないが、番組では一切インボイスの話は出てこなかった。本気で消費税について議論する番組なのかどうか怪しい。
また、消費税還付金を悪用した犯罪も後を絶たない。
財界が消費税増税押しをした理由 消費税の輸出還付制度=戻し税を使った犯罪発覚

中古カメラ部品などの輸出入会社「ハナヤカ」(東京・板橋)などのグループ約10社が東京国税局の税務調査を受け、消費税の還付制度=「戻し税」を悪用して約4億円を不正に還付させたと指摘されたことが2012年10月30日、分かりました。同局は重加算税を含め約5億円を追徴課税したということです。


6.国際競争力が上がれば税収が伸びる?
中空麻奈氏(BNPパリバ証券投資調査本部長)

ユーロ危機の中で、ギリシャ・アイルランド・ポルトガル・スペイン・イタリアなどあるのですが、唯一アイルランドだけは回復過程に入ってます。なぜかというと法人税を12.5%と低いところで抑えたからなんです。
これは企業が国際競争力を持つことが出来たから、税収が上がったからです。


アイルランドを引き合いに、法人税減税したら全体的に税収が伸びたといっているが、1.の表にあるようにアイルランドは輸出に59.2%も依存している国である。それを輸出依存度14.0%の日本と比べることに意味はあるのだろうか?
国際競争力についても、過去のエントリーを参照していただきたい。
法人税(3) 国際競争力とは?

2008年にノーベル経済学賞を受賞した国際経済学者、ポール・クルーグマンは、国際競争力というものはペテンだということを言っている。国際競争力をつけなくてはいけないからと賃下げするのは愚の骨頂だと主張してきたのだ。アメリカは貿易依存度は1割程度で内需が9割の国なのに、そんな国で労働者の賃金を下げていったらマーケットが小さくなって経済がだめになるというのがクルーグマンの考えである。国際競争力信仰の危うさを看破した画期的な人なのだ(*1)。
*1:富裕層が日本をだめにした!「お金持ちの嘘」にだまされるな・和田秀樹


先ほど述べたように日本の輸出依存度はGDPに対してわずか14%である。つまり内需が8割の国なのだ。このような中で、非正規雇用を増やしたりブラック企業による労働者いじめ、電機産業の大リストラをした結果が今の日本の経済状況(デフレ・スパイラル)である。これは「国際競争力」という言葉がまやかしであることの証明だ。「国際競争力」とは人々に競争を煽り立てて、苦しい暮らしを我慢しろというものでしかない。
そして中空氏の言う国同士による法人税減税合戦は国民に何をもたらすだろうか。最近書いたエントリーでも、タックス・ヘイブンによってグローバル企業が多くの税金を逃れていることが問題になっている。
タックス・ヘイブン

・ジョン・クリステンセンのインタビューから
租税回避をしているのはスターバックスだけではありません。グーグルやアマゾンなどあらゆるグローバル企業が行っています。租税回避をしている企業は市民が払った税金で提供されるインフラや行政サービスをただで使っています。食い物にしていると言っても過言ではありません。グローバル企業は民主主義国家を脅かす存在になっているのです。


最近はグローバル企業だけではなく、個人でもこうした動きが加速している。kojitakenさんのところでも、下記のエントリーが非常に注目を集めた。
NHKスペシャル『"新富裕層" vs. 国家 ~富をめぐる攻防~』(8/18)のメモ

世界に1100万人いるという「リッチスタン人」のうちアメリカに次いで多いのが日本人で、190万人いるという。日本の人口の1%ならぬ1.5%。番組では日本の「新富裕層」がシンガポールへ、アメリカの「新富裕層」がプエルトリコにそれぞれ移住した実例を紹介していた。

日本では株式等の売却益に10%の税金がかかる*1が、シンガポールでは非課税。法人税も低く、日本の「新富裕層」がシンガポールに毎年移住しているとのこと。
(中略)
番組で秀逸だと思ったのは、稼ぐだけ稼いで国に富をもたらさない「新富裕層」を生み出したのがレーガン時代のアメリカの政策だったと正確に指摘していたことだ*2。番組は、確かWSJのロバート・フランク記者の口を借り手だったと思うが、「トリクルダウン理論」は成り立たなかったと断定していた。「新富裕層」を「モンスター」とも言っていた。

アメリカのオバマ大統領は富裕層増税を求めるが、富裕層の意を受けたロビイストが共和党議員に富裕層増税に賛成しないよう念を押している。日本でも所得税の最高税率が40%から45%に引き上げられることに触れていたが、株式等の配当や売却益の軽減税率が続いていることには言及しなかった*3。こういう限界があったとはいえ、税金逃れの策を弄するモンスターである「新富裕層」の問題を鮮やかに浮き彫りにした好番組ではあった。


ここまで長々書いたが、じつはまだ番組は中盤である。結局この討論番組は、上記で指摘した資料を視聴者に見せないで、消費税増税やむなしという政府の下地を作るためのものだった。もっとちゃんとした討論番組を期待していたのだが、子供だましでしかなかったのは残念だ。

【Takky@UC】

[編集部より]
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当Nabe Party では mixi「鍋党コミュ」ないで税政に関するさまざまな議論を活発に行っております。その成果結果(OUTPUT)を当ブログに掲載しています。ぜひあなたもmixi「鍋党コミュ」に参加して、一緒に議論に参加してみませんか?小さな政府論はおかしいと思う人は、ぜひご参加ください。そして現在の「強者への逆再分配税制」を改めていきませんか?お待ちしております。



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ジャンル : 政治・経済

続:無期雇用労働者を増やすはずの「改正労働契約法」がなぜ「5年有期雇い止め促進法」になってしまうのか

2013年5月13日公開の「改正労働契約法」をあつかったエントリでは、この法律改訂が起こした問題点を指摘しました。今回は、ぼく自身の経験を通して、どのようにこの問題に対処していったらよいのか考えてみます。前回のエントリを要約すると以下の点があります。

「改訂労働契約法」のポイント
・4月から、連続5年を越えて働いた有期雇用労働者が申請すれば、会社はその人を無期雇用にしなければならない「改正労働契約法」が施行された
・本来であれば、5年を超えれば無期雇用となり雇用が安定するはずが、雇い主(企業)側が通算雇用年数を原則5年以内として、実質5年を超えない雇止めがはじまっている。


ぼく自身も大手企業(工場)で、10年もの間、六ヶ月ごとの契約更新をする契約社員であり、今回この問題にまともに直面することとなってしまいました。5月の連休前に、自分の部署で働く契約社員が部屋に集められ、人事より説明会が行われました。その内容は以下のようなものでした。

人事の説明会
1. 4月1日で労働関連の法律で一部改正があり、それにともなって契約社員の就業規則の改定も行わた。
2. 就業規則改定において、契約社員の契約上限が5年というものが明記された。
3. この5年という期間については、2013年4月1日に法律の改正が行われて、就業規則も4月1日から改定となったので、4月1日以降、最初に皆さんが更新をするときから5年間というのがその上限期間となる。


というものでした。
今まで契約書には契約更新の上限などという言うものはなかったのですが、2013年4月1日以降に契約更新した場合は、5年後の2018年までが雇用期間の上限という契約内容になります。もちろんこれは、今回の「改訂労働法」によって5年を過ぎれば無期雇用を申し込んだ者は、無期雇用にしなくてはならないことを防止する会社側の悪質な雇止め措置と言えます。

会社には労働組合はあるものの、正社員しか入れず、ぼくのような契約社員は組合に入ることは出来ません。そのため、ぼく自身は会社に知られないように、一人でも入れる産業別労働組合(ユニオン)で活動しており、すぐにユニオンにこの件について相談をしました。まず、改訂された時給契約社員就業規則にどのように書いてあるか調べてみたところ、

付則第1条 雇用契約の期間
・次条の定めにより、契約更新をすると決定した場合であっても、通算契約期間は最初の契約開始日から5年を超えないもとのとする。


という文言が新たに追記されていました。そして6月に入り新しい契約書を渡され、そこには

・契約の更新
通算契約期間は本契約開始日(2013年7月1日)から5年を超えないものとする。


という文言が追記されていました。
そこでユニオンで対策として、以下のブログを参考に対応することにしました。

“有期労働契約の「更新上限の合意」への対応策”

このブログにあるように準備行動として

先ず、有期社員は、使用者に、もしこの合意をしなければどうなるかを質問する。
この場合、使用者は、「合意しなければ、すぐ3月末で雇止めをする」と回答するでしょうから、この回答をしっかりメモや録音しておくことが重要です。


なぜこのようなことを使用者(企業側)に質問するかというと、その下に説明があります。

・就業規則の変更への対応
なお、有期社員向けの就業規則に、今まで更新の上限がないにもかかわらず、有期契約の更新の上限が新たに定められた場合には、労働条件の不利益変更(更新の上限のない労働条件から、更新上限のある労働条件への不利益変更)ですから、労働契約法10条違反です。従前からの有期社員(有期契約労働者)を法的に拘束することはできません。


これは違法またはかなりなグレーゾーンであり、そのことを使用者(企業側)が理解していなければ、当然「合意しなければ雇止めするぞ!」という回答をしてくるでしょう。それを引き出すのが狙いです。
そのあと、とりあえずは契約更新して、次の契約期間に入ってから、このブログの通りに

・今回の更新上限の合意は、労契法18条の潜脱(せんだつ)するもので、改正労契法の趣旨に反して違法無効であり、撤回を求める。


として抗議しようと作戦を練りました。
そこでぼくは、人事に以下のような内容のメールを送りました。

改訂された「時給契約社員就業規則」に基づき、新しい契約書にはこのような条項がはいっています。

・通算契約期間は本契約開始日(2013年7月1日)から5年を超えないものとする。

もし、私がこの改定された一項について同意しない場合は、どのようになるのでしょうか?
お忙しいところ恐れ入りますが、来週月曜日 17:30までに、メールでご回答をお願いいたします。


メールを送ったのは週末の金曜日であり、翌週の月曜日の17:30までに返事をするようにと期限を切っておきました。
翌週の月曜日、ぼくは人事からの返事を待ちましたが、万が一メールでの返信ではなく、人事から直接呼び出された場合に備えて、ボイスレコーダを携帯していました。17時を回っても返事がなく、今日は返事がないとあきらめかけていたところに、人事から以下の返事がきました。

人事からの返信(要約)
1. 今年の4月以降の契約書は、規定の改定に基づきその内容を追加している
2. 改定内容について同意できない場合でも、現時点においては契約期間の上限もまだ先になるため、契約書にその文言を記載せずに契約する事は可能である
3. ただし、会社としては先日説明したとおり、今後は規定に則り契約管理をすることになるため、弊社の事情を察しの上、改定内容についてご理解いただく事をお願いする


2.については、人事はあっさりと、今回の契約書の変更内容を取り下げてしまいました。これには、ぼくは拍子抜けしてしまいました。ただし、契約書は白紙撤回するが、3.の改訂された就業規則(規定)にしたがって契約管理をするというふうに言ってきていますから、会社は5年後に改訂された就業規則をたてに更新拒絶をしてくる可能性もあります。

とりあえず、

・通算契約期間は本契約開始日(2013年7月1日)から5年を超えないものとする

この条項の文言(不更新条項といいます)を記載しない契約書を新たに作ってほしいと人事にメールで返信しておきました。
翌日の夕方、人事部から新しい契約書が自分の部長宛に送られてきて、ぼくは不更新条項のない契約書を手にすることが出来ました。

今回、会社は「1.就業規則」「2.変更内容の周知および同意」「3.契約書」の3段構えで5年雇止めを行おうとしてきました。

1. 時給契約社員就業規則を改訂して、雇用契約期間を「5年を超えない」ものとする。
2. 人事が契約社員全員に説明を行い、改訂内容を周知して、改訂内容に契約社員が同意したということにする。
3. 個別の契約書に「通算契約期間は本契約開始日(2013年*月1日)から5年を超えないものとする。」という文言を新たに入れて、契約書にサインさせる。


ぼくは2.については「同意できない」とつたえて、その結果 3. の契約書の内容を元に戻すことが出来ました。しかし、1.の就業規則に関しては、元に戻させるというところにいたっていません。今後はこれをどのように元に戻させるかが課題となります。

実は自分の会社で働く同じ契約社員の友達にも何人か声をかけて、一緒に会社と闘おうと呼びかけたのですが、ほとんどの人が「会社と戦うのではなく転職したい」ということでした。
ぼくが「たとえ転職しても、また派遣や契約社員になったのでは、同じ道をぐるぐる回るだけでおなじだから、ここで一緒に頑張ろう!」と説得したのですが、もはやこのように5年で雇止めを行おうとする会社では、働く意欲すらないという感じでした。人事が5年で契約を満了すると説明したことで、多くの契約社員は、長くてあと5年しかいられない会社で一生懸命仕事などする気持ちもなく、労働者のモチベーションを下げただけです。このようなことは、工場の生産性や歩留まりに直接響いてしまうのではないかと心配です。また、契約社員の中には、近所の養護学校を卒業してきた知的障害がある人たちもいます。このような人たちが5年後に会社を追い出されて、路頭に迷うのではないかと思うと心配です。養護学校の先生たちがこの事実を知ったらどのように思うでしょうか。
企業は単に商品を消費者に提供するというだけでなく、地域の雇用という社会的責任もあることも自覚してもらわなくてはいけません。

このように労働者の労働意欲が下がった状況では、日本の社会が活力を失うのは当然です。先日の選挙前までは、アベノミクスであたかも景気が良くなったような演出をテレビなどではしていましたが、実際には2013年には非正規比率が男20.9%、女55.4%と男女とも過去最高を更新している状況で、働く人たちは暮らしや雇用が良くなったという実感はないでしょう。先日の選挙でブラック企業がキーワードになったのもこのためです。日本の社会が本来の力を取り戻すためには、単に株価の上下に一喜一憂することではなく、労働者の安定した雇用と収入によって実現されるのではないでしょうか。長期的な安定が労働者のスキルアップにもつながります。今回の「改訂労働契約法」を本当の意味で労働者の安定した雇用と収入に結びつける必要があります。

・労働組合連絡先
電機・情報ユニオン
首都圏青年ユニオン
一人からでも労働組合に入れます。

【Takky@UC】

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