密室で進む生活保護の大幅見直し
6月22日の毎日新聞に雨宮処凛さんが、現在進行中の生活保護見直しについて「費用削減より命が大事」と題した記事を寄稿されている。残念ながらWEBにはアップされていないが、重大な事なので、この雨宮さんの記事や他の報道も参考にして改定案の問題点をまとめてみた。
先月14日、厚生労働省は生活保護受給者が200万人を越えたと発表した。
20年来の貧困層の広がりに加え、東日本大震災での被災で受給を余儀なくされている人は増えている。その数は戦後の混乱期並みだという。
その「最後のセーフティーネット」生活保護制度の大幅な見直しという重大な協議が、密室で行われようとしている。
5月30日、生活保護制度の改定について厚生労働省と地方自治体との協議が始まった。この日の協議は一般傍聴不可ながらメディアには公開されたが、8月までの取りまとめを目指し、今後の協議は事務レベルですすめるとしている。厚労相は事務レベル協議はメデイアも含め「非公開」との事なので2回目以降は日程も知らされず、メデイアも入れず、議事録さえ公開しないということになる。
そんな協議に異議を唱えるのは自立生活サポートセンター・もやい理事長の稲葉剛氏。
「まずはプロセスの問題ですね。福祉の制度を作る中で、例えば障害者施策だったら当事者の意見を聞く。それがないのは今時ありえない」
さらに問題なのは、改定案の中身そのもの。
議論の中心となるのは、昨年10月に政令指定都市市長会が発表したもので、その骨子は
働ける年齢層(16~65歳)に対して
●就労自立を促しボランティアや軽作業を義務づける
●ボランティアなどへの態度をみて3~5年で受給の可否を判断する更新制度を導入する――など生活保護に有期制を持ち込む。
●医療扶助も一部自己負担とする
となっている。
増え続ける生活保護費を抑えることが狙いなのは一見して明らかだが、前述の稲葉氏は強い懸念を表明している。
ひとつは事実上の有期制になるのではないかという点。とにかく「働け」と就労指導し、3~5年で自立できなければ打ち切りということ。この有期制、アメリカでは貧困母子家庭支援に対して適用され、その結果、自殺やホームレス化が増えたという。もうひとつは医療費の一部が自己負担になるのではないかという点。「一部くらい」と思う人もいるかもしれないが、生活保護受給者の8割は高齢者と病気・障害を抱える人たちなのだ。一部とはいえ医療費の自己負担は大きい。生活費が減ることを恐れて病院行きを遅らせれば命を落としたり、あるいは重篤な状態に陥り、結果としてより医療費が高くつくことにもなりかねない。
そして「なんでもいいから働け」と強要され追い詰められた結果どうなるのか。2007年7月、働けないのに働けと言われ、生活保護を辞退した男性が 「おにぎり食べたい」と日記に残して餓死したことは当時かなりの衝撃を社会に与えたが、同種の事件はその後もいくつも起こっている。雨宮さんの記事によると稲葉氏の知人には、厳しい就労指導に耐えられず「生活保護をやめて福島原発に行く」という人もいたという。
政権交代前の2008年に出版された「反貧困」で湯浅誠氏は「日本社会は、貧困問題に関して、スタートラインにさえ立っていない」と述べていた。政権交代後の2009年10月、民主党政権は「相対的貧困率」を初めて発表した。その意味では「スタートラインに立った」とはいえるかもしれない。しかし、今回の改定案を見る限り 「立ったけれど、スタートラインからさらに後退」 に思えてならない。
【ぽむ】
[編集部より]
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先月14日、厚生労働省は生活保護受給者が200万人を越えたと発表した。
20年来の貧困層の広がりに加え、東日本大震災での被災で受給を余儀なくされている人は増えている。その数は戦後の混乱期並みだという。
その「最後のセーフティーネット」生活保護制度の大幅な見直しという重大な協議が、密室で行われようとしている。
5月30日、生活保護制度の改定について厚生労働省と地方自治体との協議が始まった。この日の協議は一般傍聴不可ながらメディアには公開されたが、8月までの取りまとめを目指し、今後の協議は事務レベルですすめるとしている。厚労相は事務レベル協議はメデイアも含め「非公開」との事なので2回目以降は日程も知らされず、メデイアも入れず、議事録さえ公開しないということになる。
そんな協議に異議を唱えるのは自立生活サポートセンター・もやい理事長の稲葉剛氏。
「まずはプロセスの問題ですね。福祉の制度を作る中で、例えば障害者施策だったら当事者の意見を聞く。それがないのは今時ありえない」
さらに問題なのは、改定案の中身そのもの。
議論の中心となるのは、昨年10月に政令指定都市市長会が発表したもので、その骨子は
働ける年齢層(16~65歳)に対して
●就労自立を促しボランティアや軽作業を義務づける
●ボランティアなどへの態度をみて3~5年で受給の可否を判断する更新制度を導入する――など生活保護に有期制を持ち込む。
●医療扶助も一部自己負担とする
となっている。
増え続ける生活保護費を抑えることが狙いなのは一見して明らかだが、前述の稲葉氏は強い懸念を表明している。
ひとつは事実上の有期制になるのではないかという点。とにかく「働け」と就労指導し、3~5年で自立できなければ打ち切りということ。この有期制、アメリカでは貧困母子家庭支援に対して適用され、その結果、自殺やホームレス化が増えたという。もうひとつは医療費の一部が自己負担になるのではないかという点。「一部くらい」と思う人もいるかもしれないが、生活保護受給者の8割は高齢者と病気・障害を抱える人たちなのだ。一部とはいえ医療費の自己負担は大きい。生活費が減ることを恐れて病院行きを遅らせれば命を落としたり、あるいは重篤な状態に陥り、結果としてより医療費が高くつくことにもなりかねない。
そして「なんでもいいから働け」と強要され追い詰められた結果どうなるのか。2007年7月、働けないのに働けと言われ、生活保護を辞退した男性が 「おにぎり食べたい」と日記に残して餓死したことは当時かなりの衝撃を社会に与えたが、同種の事件はその後もいくつも起こっている。雨宮さんの記事によると稲葉氏の知人には、厳しい就労指導に耐えられず「生活保護をやめて福島原発に行く」という人もいたという。
政権交代前の2008年に出版された「反貧困」で湯浅誠氏は「日本社会は、貧困問題に関して、スタートラインにさえ立っていない」と述べていた。政権交代後の2009年10月、民主党政権は「相対的貧困率」を初めて発表した。その意味では「スタートラインに立った」とはいえるかもしれない。しかし、今回の改定案を見る限り 「立ったけれど、スタートラインからさらに後退」 に思えてならない。
【ぽむ】
[編集部より]
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