NHKスペシャル「ヒューマン なぜ人間になれたのか そしてお金が生まれた」
NHKスペシャル 2月26日 放送を多くの方が見たと思うが、ぼくにとっても興味深い内容だったので、以下にメモしておく。
ヒューマン なぜ人間になれたのか
第4集 そしてお金が生まれた
お金はどのようにして生まれたか
古代メソポタミア時代において、麦はお金の代わりだった。麦を鉢に入れて、労働者に給料として払っていた。つまり、さまざまなものが当時は麦をお金の単位として交換していた。
お金による交換は人間にしかできないものであり、信頼関係によって人間だけが交換できるのだという。
麦を使って交換することによっていろいろな職業が生まれ、経済が発展していった。つまり、その人が得意なことを職業としてやっていき、麦のお金で交換していく。こうした職業の誕生によって食料の生産は一気に三倍にもなったという。そして経済が発展して、巨大な神殿が建設された。
次の世代に入ると、ギリシャ・アテナイでコインが生まれる。
ほぼ銀100%のコインは信頼され、コインを通じて人々の流通が一気に加速していく。
つまり、アテナイのコインは永遠の価値を持っているのだ。
コインの登場によって、世界は別の方向に変わった。
イギリス・エクセター大学(歴史学) リチャード・シーフォード博士によれば
-お金は集団から切り離された個人を作り出した
-のし上がるのも没落するのも個人の責任
-お金があれば、それまでの人間関係は必要がない。それは集団からの孤立ではあるが、開放でもある。
こうした結果どうなったかというと、お金を持つものと持たないものが生まれた。つまり格差が生まれた。
お金をたくさん持とうとする欲求。お金を持っていないという不満。
脳科学によって、人間にはより多くのお金を持とうとする仕組みが確かめられた。
その仕組みがあるのは脳の「腹側線条体」という場所で、人間の快楽をつかさどる中枢だ。
株取引をしてる人の脳の活動をMRIで観察したところ、儲かりそうな金額が大きければ大きいほどその活動は活発になり、得られる快感も大きくなっていた。つまり、お金を求める欲望にはきりがないということがわかった。
麦のお金が普及した最古の都市・テル・ブラクでは、お金によって争いが起きた。
ここで大量の人骨が見つかったのだ。イギリス・ケンブリッジ大学 オーガスタ・マクマホン博士(考古学)によれば、この大量の人骨は、より豊かな暮らしを求める富裕層と底辺に置かれた人たちの争いによって起こった可能性が高いと説明している。都市という大集団の中では競争が激しくなり、必然的に格差が生まれたためだという。
あまりにも貧富の差ができると「アマギ」という「借金帳消し制度」によって、借金を帳消しにして、奴隷を元の家族に戻して、彼らにやり直すチャンスを与えた。また、すでに十分豊かになった人々の欲望が暴走するのを抑える役割を果たした。
発展と格差。私たちはそのバランスを自らとることはできるのだろうか?
その答えを脳に探った研究があった。アメリカ・ラトガース大学で興味深い実験が行われた。
1.被験者二人にくじを引いてもらう
2.くじの片方には"Rich(金持ち)"と書いてあり、もう片方には"Poor(貧乏)"と書いてある。
3.Rich には参加料として80ドル渡して、Poorには30ドルが渡される。二人の間にわざと格差を作る。
4.追加の50ドルをRichかPoorのどちらかに渡す。
5.このとき調べるのはRichの脳の快楽の中枢「腹側線条体」
6.Richが50ドルもらい、所持金が130ドルに膨れ上がったとき、Richの「腹側線条体」は0~5段階レベルでやや上昇(1のレベル)になるのがわかる。やっぱり所持金が増えてちょっとうれしいということ。
7.ところが別の被験者のグループでRichではなくPoorに50ドル渡して、ともに80ドルとなった場合、格差はなくなる。
8.その時のRichの「腹側線条体」の反応レベルは、なんと5のレベル。きわめて強く反応していることがわかる。20人に同じ実験をしたが同じように強いレベルを示していた。
この実験からわかることは、われわれの脳は「お金以外のものに価値を置く仕組みがある」ということだ。本来、自分がもうかれば喜ぶはずの脳は、実は公平かどうかをとても気にしていたということがわかった。
しかし、この実験の重要な条件は
-相手が目の前にいるということ
自分が得した分、損した相手の姿を見ると、脳の中で分かち合う心が動き始める。脳がこうした反応を見せるのは、長い間の時間をかけて協力し合う心が進化したためだと同大学のエリザベス・トリコミ博士は説明している。
番組の最後では、現代では相手の顔の見えない人たちとつながっている。また、時代を超えて未来の人々ともつながっている。未来の誰かにツケをまわすことは、許されるのだろうか?それは不運だったですませられるのだろうか?その答えはわからない。でも、今まで人類は世の中を変えていき、これからも変えていけるだろう。
ここまでがNHKスペシャルの内容(ところどころ割愛してます)。
前半はお金の起源について紹介し、後半は人間の脳はどのように格差を認識しているかの実験の紹介だった。
前半の紹介のように、そもそもお金というのは、人間の信頼関係によってできている。だから今のアメリカみたいに、ドル札をバンバン刷っていれば、信頼が低下するは当然だろう。1971年のニクソンショック以前にもどれとは言わないが、いくらなんでもひどすぎる状態。いま、円高で日本の国内企業がどこも苦労しているが、そもそも円高なのはドルの信用が落ちていて、相対的に円が高くなっているだけのこと。グローバルで見て、日本人の人件費が高くて、日本では製品製造ができないとよく言われる。しかし、これは日本が悪いわけではない。信用のないドルが悪いわけだから、そこは誤解しないでほしい。もういい加減「ドルを基軸通貨にするのはやめてください!」と言えばいい。基軸通貨は一国の通貨を使うのではなく、共通の通貨を使うことの方が望ましい。もちろんユーロも大変苦労しているが、最終的に世界は共通通貨という方向に行くべきだと思う。
後半は人間の脳が格差をどのように感じているかの実験で興味深い。
この実験のおもしろいところは、RichとPoorの人が顔を合わせて二人で並んで座っているところ。目の前にいる人と格差があった場合、Richは格差がないほうがよいと思うわけです。でも、相手が見えない社会であれば、Richは格差があっても良いと思うかもしれない。
そして、もうひとつ脳の「腹側線条体」の状態をMRIで見ることによって、株をやっている人の脳の動きが、儲かりそうなときは高い反応を示すことがわかった。
先日、飲みに行ったときに、知り合いが「震災直後に東京電力の株を100万円分くらい買ったんだけど、売ったときは40万くらい。結局60万損しちゃったよ」と言っていて目が点になってしまった。結局、彼にとっては株はギャンブルか何かなのだろう。 小株主にとって、彼らはもっとも移動しやすい身軽な利害関係者なので、会社の長期的未来をもっとも気づかわない人々になる場合が多い(*1)。
そうした目先の利益ばかりを追い求めた結果、安全を軽視し利益を優先した原発(*2)が事故を起こした。同様に株主にばかりにいい顔している製造メーカ(大企業)は、人員削減して開発力・生産力を失っていった。
お金の使い方というのは、結構大事なのだ。何でも安ければいい、何でも儲かればいいというのは、やめてもらいたい。
*1:参考図書
・ハジュン・チャン「世界経済を破綻させる23の嘘」
*2:電力会社の株主
・多くは生命保険会社や銀行が株主
・脱原発の東電株主運動がある
【Takky@UC】
[編集部より]
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ヒューマン なぜ人間になれたのか
第4集 そしてお金が生まれた
お金はどのようにして生まれたか
古代メソポタミア時代において、麦はお金の代わりだった。麦を鉢に入れて、労働者に給料として払っていた。つまり、さまざまなものが当時は麦をお金の単位として交換していた。
お金による交換は人間にしかできないものであり、信頼関係によって人間だけが交換できるのだという。
麦を使って交換することによっていろいろな職業が生まれ、経済が発展していった。つまり、その人が得意なことを職業としてやっていき、麦のお金で交換していく。こうした職業の誕生によって食料の生産は一気に三倍にもなったという。そして経済が発展して、巨大な神殿が建設された。
次の世代に入ると、ギリシャ・アテナイでコインが生まれる。
ほぼ銀100%のコインは信頼され、コインを通じて人々の流通が一気に加速していく。
つまり、アテナイのコインは永遠の価値を持っているのだ。
コインの登場によって、世界は別の方向に変わった。
イギリス・エクセター大学(歴史学) リチャード・シーフォード博士によれば
-お金は集団から切り離された個人を作り出した
-のし上がるのも没落するのも個人の責任
-お金があれば、それまでの人間関係は必要がない。それは集団からの孤立ではあるが、開放でもある。
こうした結果どうなったかというと、お金を持つものと持たないものが生まれた。つまり格差が生まれた。
お金をたくさん持とうとする欲求。お金を持っていないという不満。
脳科学によって、人間にはより多くのお金を持とうとする仕組みが確かめられた。
その仕組みがあるのは脳の「腹側線条体」という場所で、人間の快楽をつかさどる中枢だ。
株取引をしてる人の脳の活動をMRIで観察したところ、儲かりそうな金額が大きければ大きいほどその活動は活発になり、得られる快感も大きくなっていた。つまり、お金を求める欲望にはきりがないということがわかった。
麦のお金が普及した最古の都市・テル・ブラクでは、お金によって争いが起きた。
ここで大量の人骨が見つかったのだ。イギリス・ケンブリッジ大学 オーガスタ・マクマホン博士(考古学)によれば、この大量の人骨は、より豊かな暮らしを求める富裕層と底辺に置かれた人たちの争いによって起こった可能性が高いと説明している。都市という大集団の中では競争が激しくなり、必然的に格差が生まれたためだという。
あまりにも貧富の差ができると「アマギ」という「借金帳消し制度」によって、借金を帳消しにして、奴隷を元の家族に戻して、彼らにやり直すチャンスを与えた。また、すでに十分豊かになった人々の欲望が暴走するのを抑える役割を果たした。
発展と格差。私たちはそのバランスを自らとることはできるのだろうか?
その答えを脳に探った研究があった。アメリカ・ラトガース大学で興味深い実験が行われた。
1.被験者二人にくじを引いてもらう
2.くじの片方には"Rich(金持ち)"と書いてあり、もう片方には"Poor(貧乏)"と書いてある。
3.Rich には参加料として80ドル渡して、Poorには30ドルが渡される。二人の間にわざと格差を作る。
4.追加の50ドルをRichかPoorのどちらかに渡す。
5.このとき調べるのはRichの脳の快楽の中枢「腹側線条体」
6.Richが50ドルもらい、所持金が130ドルに膨れ上がったとき、Richの「腹側線条体」は0~5段階レベルでやや上昇(1のレベル)になるのがわかる。やっぱり所持金が増えてちょっとうれしいということ。
7.ところが別の被験者のグループでRichではなくPoorに50ドル渡して、ともに80ドルとなった場合、格差はなくなる。
8.その時のRichの「腹側線条体」の反応レベルは、なんと5のレベル。きわめて強く反応していることがわかる。20人に同じ実験をしたが同じように強いレベルを示していた。
この実験からわかることは、われわれの脳は「お金以外のものに価値を置く仕組みがある」ということだ。本来、自分がもうかれば喜ぶはずの脳は、実は公平かどうかをとても気にしていたということがわかった。
しかし、この実験の重要な条件は
-相手が目の前にいるということ
自分が得した分、損した相手の姿を見ると、脳の中で分かち合う心が動き始める。脳がこうした反応を見せるのは、長い間の時間をかけて協力し合う心が進化したためだと同大学のエリザベス・トリコミ博士は説明している。
番組の最後では、現代では相手の顔の見えない人たちとつながっている。また、時代を超えて未来の人々ともつながっている。未来の誰かにツケをまわすことは、許されるのだろうか?それは不運だったですませられるのだろうか?その答えはわからない。でも、今まで人類は世の中を変えていき、これからも変えていけるだろう。
ここまでがNHKスペシャルの内容(ところどころ割愛してます)。
前半はお金の起源について紹介し、後半は人間の脳はどのように格差を認識しているかの実験の紹介だった。
前半の紹介のように、そもそもお金というのは、人間の信頼関係によってできている。だから今のアメリカみたいに、ドル札をバンバン刷っていれば、信頼が低下するは当然だろう。1971年のニクソンショック以前にもどれとは言わないが、いくらなんでもひどすぎる状態。いま、円高で日本の国内企業がどこも苦労しているが、そもそも円高なのはドルの信用が落ちていて、相対的に円が高くなっているだけのこと。グローバルで見て、日本人の人件費が高くて、日本では製品製造ができないとよく言われる。しかし、これは日本が悪いわけではない。信用のないドルが悪いわけだから、そこは誤解しないでほしい。もういい加減「ドルを基軸通貨にするのはやめてください!」と言えばいい。基軸通貨は一国の通貨を使うのではなく、共通の通貨を使うことの方が望ましい。もちろんユーロも大変苦労しているが、最終的に世界は共通通貨という方向に行くべきだと思う。
後半は人間の脳が格差をどのように感じているかの実験で興味深い。
この実験のおもしろいところは、RichとPoorの人が顔を合わせて二人で並んで座っているところ。目の前にいる人と格差があった場合、Richは格差がないほうがよいと思うわけです。でも、相手が見えない社会であれば、Richは格差があっても良いと思うかもしれない。
そして、もうひとつ脳の「腹側線条体」の状態をMRIで見ることによって、株をやっている人の脳の動きが、儲かりそうなときは高い反応を示すことがわかった。
先日、飲みに行ったときに、知り合いが「震災直後に東京電力の株を100万円分くらい買ったんだけど、売ったときは40万くらい。結局60万損しちゃったよ」と言っていて目が点になってしまった。結局、彼にとっては株はギャンブルか何かなのだろう。 小株主にとって、彼らはもっとも移動しやすい身軽な利害関係者なので、会社の長期的未来をもっとも気づかわない人々になる場合が多い(*1)。
そうした目先の利益ばかりを追い求めた結果、安全を軽視し利益を優先した原発(*2)が事故を起こした。同様に株主にばかりにいい顔している製造メーカ(大企業)は、人員削減して開発力・生産力を失っていった。
お金の使い方というのは、結構大事なのだ。何でも安ければいい、何でも儲かればいいというのは、やめてもらいたい。
*1:参考図書
・ハジュン・チャン「世界経済を破綻させる23の嘘」
*2:電力会社の株主
・多くは生命保険会社や銀行が株主
・脱原発の東電株主運動がある
【Takky@UC】
[編集部より]
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当Nabe Party では mixi「鍋党コミュ」ないで税政に関するさまざまな議論を活発に行っております。その成果結果(OUTPUT)を当ブログに掲載しています。ぜひあなたもmixi「鍋党コミュ」に参加して、一緒に議論に参加してみませんか?小さな政府論はおかしいと思う人は、ぜひご参加ください。そして現在の「強者への逆再分配税制」を改めていきませんか?お待ちしております。
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