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「利潤」は世界を豊かにするか

ある画家が10円の画用紙に100円の絵の具で書いた絵が1億円でA財団に売れたとする。
世界には一枚の絵が財産として加わり、画家は9999万9890円を得たことになる。ところでここで一度確認すると、増えたのは一枚の絵だ。お金は増えていない。画家が支払った110円はいま画材屋さんの手の中にあり、A財団が払った一億円は画家の手に移った。画家は自分の絵に一億円の値がつけられたことに満足して一億円で絵をA財団に売り、A財団は一億円で絵が手に入ったことに満足して一億円を支払った。
ここには何の不思議もない。

ではここに商業資本が入り込んで、安く買って高く売る、利潤の極大化を目指したらどうなるか。

まず「資本」は画家からなるべく安く絵を仕入れ(たとえば1000円としよう)、A財団になるべく高く売る(たとえば1億円としよう)。資本の利潤は9999万9000円になる。
ところで、世界に一枚の絵を付け加えたのは画家であり、お金を払ったのはA財団だ。「資本」は何も付け加えていない。絵がより美しくなったわけではないし、お金をふやしたわけでもない。資本の取り分は本来なら仲介手数料程度のものでいいはずだ。

もう一回確認する。「利潤」は世界に何かを付け加えていない。
「利潤」はこのままでは世界からピンはねしただけだ。

このとき、転売目的で資産として抱え込んだらどうなるか。
思惑の額が2億円になり、3億円になり、世界がその思惑の額だけお金が増えたように見えるかもしれないが、それはバブルであり、実際に売るときには、たとえばそれが5億円であったとしても、そのお金は買った人から売った人に移動しただけであり、お金は増えていなかったことがわかる。

「一枚の絵」は実は値段があってないようなもので、一般的な商品の代表にはならないのだが、でも同じことは、「大工さんが建てた100件の家」でも、「ウォークマンというヒット商品」でもいえる。
家が売れて儲けが出たらそれは大工さんに還元されるのが本来だろうし、ウォークマンが大ヒットしたらウォークマンの開発製造チームのボーナスとして分配されるべきだ。
実は利潤を出してしまったら株主に配当を支払わなければならなくなるから、それよりは社員にボーナスを出し、社内交際費として自分たちで使ってしまうほうがまし、というのが日本型経営であった。
大工さんを買い叩いて家を安く仕入れ、労働者の賃金を引き下げて利潤を出したとして、その利潤が必要とされる生産分野に投下されて世界に新たな富をもたらすということに使われないとしたら、利潤は世界からのピンはねであり、利潤の分だけ世界は貧しくなるのだ。

「利潤は世界からのピンはね」
これはまさに大企業の内部留保に言えることである。
大企業は内部留保として総額で何兆円(ちょっとざっくり書いています)もため込んでいると言われている。

それらが労働市場に出回り、賃金として還元、流通されたら、消費が増え、世界に新たな富をもたらすことに繋がるのに、大企業はそれをしない。それらはただ眠っているだけ、世界からピンハネした利潤を眠らせてるだけなのだ。

【shn】

[編集部より]
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