99%と53%の間
アメリカ大統領選が終わった。大統領選の結果については町山智浩氏の一連のコメント が巧いこと的を射ていると思うので、この場で改めて言及する必要もあるまい。
ところで敗北したロムニー・前マサチューセッツ州知事だが、こんな発言をしていたのを覚えているだろうか?
「47%の有権者は、何があっても(オバマ)大統領に投票するだろう。(オバマ大統領を支持し続ける)これらの47%の有権者は、政府に頼りきっている…」
ロムニーが支持者との内輪の会合で口にした発言で、当然ながらオバマ陣営や民主党・その他諸々のリベラル派と言われる面々まで批判を受ける格好となったのだが、ここで何故に「47%」と言うのが唐突に出てきたのか引っかかった方々は少なくないのではないだろうか?
件の発言は、こう続いている。
「彼らは所得税を払っていない人たちだ…私はこうした人たちを心配しない」
これは一面的ではあるが、事実である。Tax Policy Centerの調査 によると、連邦所得税を負担していない世帯が2011年で46.4%にも上るという。無論、現実には所得税ばかりか給与からの源泉徴収とか付加価値税とかを課されたりしている訳なので税金を”全く”払わない世帯が半数近くってことは考え難いし、いわばロムニー氏が言う様な「たかり」って批判自体が真っ赤なウソだったりもする(例えば 「ロムニー、国民の47%を「たかり」呼ばわり」 や 「アメリカNOW 第97号 ロムニー候補の「47%発言」と米国の税・財政制度 (安井明彦)」 )。それでも、このレトリックは人気があるそうで、かの「ウォール街を占拠せよ!」って運動で「(富める)1%Vs.(貧しい)99%」ってのが盛んに言われていた最中、それに対抗して「(納税している)53%(Vs.税金を払っていない47%)」という運動 が起きてさえいる。
こう書くと、恐らくはその「(納税している)53%」ってのを支持するのは(富める)1%なんだろう、って連想する人は結構いるだろう。しかし実際には──茶会運動にも当てはまるのだが──(富める)1%と言えるほどの富裕層ではない支持者も意外に少なくない。
自分たちが99%の側にいるって自覚してない(と言うのか自認したくない?)って見立てもできるだろう。しかしながら、勤勉に働いて自らの生活を成り立たせてきた「真面目」な人間が、果たして「税金で食わせて貰っている」人間に対して幾何かの同情を抱くだろうか?寧ろ、自助努力で頑張ってきたという自負心があるからこそ、反対に公から何らかの援助を得ることに対して何かズルをしているのではないか?という訝った見方になってしまうとも言えてしまう。そこに例えば尤もらしい「特権」とか「既得権益」とかが付け加われば、(その真偽はさて置いても)尚のこと支持してしまうのも道理ではないか。
翻って日本を見てみよう。数年前の「反貧困」は何処へやら、昨今の生活保護も(10年位前の年金未納宜しく)それこそ粗捜しの様相を呈しているが、細やかながら一財産を築いた様なサラリーマンが買う様な雑誌や夕刊紙が煽情的な報道をし、一家の家事の面倒を見る主婦が「不正」への非難を声高に叫んだりしている。そして税負担が多くなれば現実的な損得関係なく反対し、そして不正を無くせ・無駄を無くせ・先ず血を流せって主張で堂々巡り。現実に犠牲者が出てみたところで、それさえも道徳律と精神論に終始してしまうのが常だ。
自分たちは、富めるor貧しいって単純な二分法で解り易く議論したことで、寧ろ現実に対処するがための視点を見失ったのかも知れない。「99%」の中には少なからず「53%」が存在していて、先ずそういう人たちを納得させるだけの物言いを打ち立てる必要があるのではないだろうか?
【杉山真大@震災被災者】
[編集部より]
記事へのご意見ご感想をコメント欄にお寄せ下さい。このエントリはmixiの「鍋党コミュ」の杉山真大@震災被災者さんの投稿です。
当Nabe Party では mixi「鍋党コミュ」ないで税政に関するさまざまな議論を活発に行っております。その成果結果(OUTPUT)を当ブログに掲載しています。ぜひあなたもmixi「鍋党コミュ」に参加して、一緒に議論に参加してみませんか?小さな政府論はおかしいと思う人は、ぜひご参加ください。そして現在の「強者への逆再分配税制」を改めていきませんか?お待ちしております。
ところで敗北したロムニー・前マサチューセッツ州知事だが、こんな発言をしていたのを覚えているだろうか?
「47%の有権者は、何があっても(オバマ)大統領に投票するだろう。(オバマ大統領を支持し続ける)これらの47%の有権者は、政府に頼りきっている…」
ロムニーが支持者との内輪の会合で口にした発言で、当然ながらオバマ陣営や民主党・その他諸々のリベラル派と言われる面々まで批判を受ける格好となったのだが、ここで何故に「47%」と言うのが唐突に出てきたのか引っかかった方々は少なくないのではないだろうか?
件の発言は、こう続いている。
「彼らは所得税を払っていない人たちだ…私はこうした人たちを心配しない」
これは一面的ではあるが、事実である。Tax Policy Centerの調査 によると、連邦所得税を負担していない世帯が2011年で46.4%にも上るという。無論、現実には所得税ばかりか給与からの源泉徴収とか付加価値税とかを課されたりしている訳なので税金を”全く”払わない世帯が半数近くってことは考え難いし、いわばロムニー氏が言う様な「たかり」って批判自体が真っ赤なウソだったりもする(例えば 「ロムニー、国民の47%を「たかり」呼ばわり」 や 「アメリカNOW 第97号 ロムニー候補の「47%発言」と米国の税・財政制度 (安井明彦)」 )。それでも、このレトリックは人気があるそうで、かの「ウォール街を占拠せよ!」って運動で「(富める)1%Vs.(貧しい)99%」ってのが盛んに言われていた最中、それに対抗して「(納税している)53%(Vs.税金を払っていない47%)」という運動 が起きてさえいる。
こう書くと、恐らくはその「(納税している)53%」ってのを支持するのは(富める)1%なんだろう、って連想する人は結構いるだろう。しかし実際には──茶会運動にも当てはまるのだが──(富める)1%と言えるほどの富裕層ではない支持者も意外に少なくない。
自分たちが99%の側にいるって自覚してない(と言うのか自認したくない?)って見立てもできるだろう。しかしながら、勤勉に働いて自らの生活を成り立たせてきた「真面目」な人間が、果たして「税金で食わせて貰っている」人間に対して幾何かの同情を抱くだろうか?寧ろ、自助努力で頑張ってきたという自負心があるからこそ、反対に公から何らかの援助を得ることに対して何かズルをしているのではないか?という訝った見方になってしまうとも言えてしまう。そこに例えば尤もらしい「特権」とか「既得権益」とかが付け加われば、(その真偽はさて置いても)尚のこと支持してしまうのも道理ではないか。
翻って日本を見てみよう。数年前の「反貧困」は何処へやら、昨今の生活保護も(10年位前の年金未納宜しく)それこそ粗捜しの様相を呈しているが、細やかながら一財産を築いた様なサラリーマンが買う様な雑誌や夕刊紙が煽情的な報道をし、一家の家事の面倒を見る主婦が「不正」への非難を声高に叫んだりしている。そして税負担が多くなれば現実的な損得関係なく反対し、そして不正を無くせ・無駄を無くせ・先ず血を流せって主張で堂々巡り。現実に犠牲者が出てみたところで、それさえも道徳律と精神論に終始してしまうのが常だ。
自分たちは、富めるor貧しいって単純な二分法で解り易く議論したことで、寧ろ現実に対処するがための視点を見失ったのかも知れない。「99%」の中には少なからず「53%」が存在していて、先ずそういう人たちを納得させるだけの物言いを打ち立てる必要があるのではないだろうか?
【杉山真大@震災被災者】
[編集部より]
記事へのご意見ご感想をコメント欄にお寄せ下さい。このエントリはmixiの「鍋党コミュ」の杉山真大@震災被災者さんの投稿です。
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テーマ : 政治・経済・時事問題
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