タックス・ヘイブン
これはNHKで2013年5月27日放送の以下の番組内容である。
“租税回避マネー”を追え ~国家vs.グローバル企業~
“租税回避” 国家と企業の攻防
グローバル企業による租税回避は世界に何をもたらすのか?タックスヘイブン研究の第一人者 ジョン・クリステンセン(経済学者)は、租税回避は税金によって支えられる国家や市民の生活を揺るがしかねないと指摘している。
ジョン・クリステンセンのインタビューから
租税回避をしているのはスターバックスだけではありません。グーグルやアマゾンなどあらゆるグローバル企業が行っています。租税回避をしている企業は市民が払った税金で提供されるインフラや行政サービスをただで使っています。食い物にしていると言っても過言ではありません。グローバル企業は民主主義国家を脅かす存在になっているのです。
青山学院大学院 教授 三木義一さんのインタビューから
アナウンサー:企業にとっては、国際的に企業活動する。そのために最大の利益を追求するということは、企業活動としては認められているという主張もありますね?
三木教授:おっしゃると通りです。基本的に企業がビジネス活動を行って、出来るだけ多くの利益を集めたいと思うのは、当然のことだと思います。ただ、私どもの社会は、法人という形で企業活動を認めたのは何のためなのか?と考えますと、それはビジネスを円滑にしてもらうためですよね。ビジネスを円滑にして大いに利益を上げていただいて、人々を雇用していただいて、税も負担し社会に貢献してもらいたい。そういう意味で私どもが法人による企業活動を認めてきたわけです。しかし、今問題にしているのはビジネスではなくて、ビジネスによって得た利益を意図的に減らすためだけを目的とした特別な行動です。このようなものを私たち社会が法人に対して認めているかというと、それはきわめて疑問です。
アナウンサー:租税回避をすることで、企業に体力を蓄えて、それを新たな投資に向けたり雇用に結び付けたりして、社会貢献をしているのだという主張がありますが、これについではどう考えていますか?
三木教授:大いに社会貢献していただきたいと思います。そのためにも、それぞれの地域からさまざまな利益を得て企業利益が上がってきているわけですから、その地域に還元してその地域を安定したものになるようにしてこそグローバル企業にとっても大切なのではないでしょうか。
アナウンサー:ただ、国境をまたいで活動している企業に対して、一国の取り組みだけで課税するのは現実的には難しいということですね。
三木教授:非常に難しいですね。今の課税制度というのは、それぞれの国が独立して行います。そうしますと全体像が見えません。こういう租税回避というのは国をまたいで行っていますから、全体像が見えません。そこである国が思い切って課税しても、裁判で争いますと国としては負けてしまうことも少なくありません。
この後番組ではロンドンにある国際タックスシェルター情報センター(JITSIC)を取材する。JITSICの目的は、国際的な租税回避の全体像を解明し課税の可能性を探ること。アメリカ、ドイツ、中国などを含めた9カ国が加盟している。
租税回避の仕組みを番組では紹介していている。それは日本にある会社からヨーロッパのある法人にコンサル料として多額の送金をしていた。しかし、その国の法人税率は高く、租税回避に使われた形跡はなかった。しかし、その法人は事業組合と呼ばれる特殊な形態をとっていた。そして、その国では事業組合は非課税だった。その後資金はタックスヘイブンにある国の複数の会社(実は日本の子会社)に流れていた。法人税率が高い国をあえて通して、資金の流れを見えにくくし、子会社に利益を移していた。
画面は再びスタジオに戻る。
アナウンサー:租税回避に対抗するには国際的にどんな体制や制度が必要でしょうか?
三木教授:いままでは一国が別々に課税していました。情報もあまり交換がありませんでした。でも、まずは情報を公開しあって、各国が協力し合うことが大事です。その上で将来的には税制の基本的なところは同じにしていくということが必要です。税の仕組みが違うからそれを(グローバル企業に)利用されるわけです。さらに言えば税率も同じにしていくことが国際的に合意してもよいのではないでしょうか。そういうことが出来ると、遠い将来には国際的に課税を協力し合って行う国際機関が出来るのではないでしょうか。これは人類の課題かもしれません。
アナウンサー:そういった国境をまたいだ企業に対しては、制度も国境をまたいだものが必要になってくるということですね。ただ、今後もグローバル化の流れは加速していくと、租税回避も増えていく。税収はどんどん減っていくことにもつながりますね。そうしますとどのようなことがおきてきますか?
三木教授:まず、いま企業を各国が誘致するために法人税の割引をしてます。どんどん税率が下がっていく。そうしますと法人税が取れなくなっていきます。その結果税金を負担するのはだれかというと、国境を利用できない庶民たちということになります。そしてこれは私たち民主主義社会の危機でもあります。私たちは民主主義という制度を受け入れて、多数決でだれが税金を負担するか決めているわけです。でも、そうやって決めたところが、それをいやな(税負担を受け入れたくない)企業が守らずに国境をまたいで逃げてしまう。そうしますと民主主義の基礎が崩れてしまいます。
アナウンサー:租税回避というと耳慣れない遠い話のように聞こえますけど、これが加速していくとやはり将来社会保障の問題とか福祉の問題に直結してきますね?
三木教授:結局これは国境を利用できる企業や人々は税金を払わないですんで、国境を利用できない人々が税金を出していかなくてはならないということになります。財源が非常に細ります。そうするといろんな社会サービスが出来なくなります。
以上が番組の内容だった。
消費者にとって、良い製品が安く買えるのは喜ばしいことだ。しかし安値の裏には税金をちゃんと払っていないというイカサマがあったら、あなたはその製品を喜んで買うだろうか?
企業はひたすら安値競争を繰り返し、そのためには労働者賃金をたたき租税回避する。このようなグローバル企業の裏の顔に対して消費者はもっと声をあげるべきだろう。
以下は、消費税増税分は、ほとんど法人税減税に消えていってしまったというグラフ。
消費税は19%に増税して、その分法人税は25%に減税して頂戴という身勝手経団連のトンデモ提言より

消費税は来年4月に8%にあがり、その先10%にあげる予定だが、それだけではすまない。もちろんヨーロッパのような福祉国家は消費税は高いが、だからと言って法人税が低いというわけではない。税金をみんなで負担しあと言う意味での消費税は意味がある。しかし、そのぶんグローバル企業は税金逃れをしていいというわけではないことは、この番組が十分説明してくれている。
以下の数字は、有価証券報告書によって作成されたもので、日本の企業の株式の多くを外国人投資家が保有していることを表している。
株主も「多国籍化」より
日立製作所 38.0%
ソニー 36.3%
武田薬品 24.9%
三井不動産 47.7%
日産自動車 68.6%
つまり、これらの日本の大企業は、いまや日本人のものではなくなっている。もちろん働いている中心は日本人だが、いくら日本人が汗水流して働いたところで、その利益は法人税という形で日本国に還元されない。法人税減税した分は外国人投資家に流れるだけに見える。さらに、こうした大企業で電機メーカは16万人ものリストラをおこなって日本人の首を容赦なく切っている。
余談だが、もちろんこうした外国人投資家の中には、中国も介入しており気になるところもある。
尖閣で関係悪化後も3兆円投資 中国政府系ファンド、日本株買い継続
このようにグローバル企業は税金も雇用も破壊しようとしている。この番組の結論でもある、グローバル企業に対する国際的な課税の取り組みはすぐにでも整備する必要がある。
【Takky@UC】
[編集部より]
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