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大企業批判は「排外主義」の罠に陥っていないか?──俗流の反グローバリズムで問題は解決できない

昨年ユーキャンがやった流行語大賞、甲乙つけがたく「倍返し」「じぇじぇじぇ」など4つが大賞にエントリーされてたそうだが、その中に「ヘイトスピーチ」というのがノミネートされていたのは余り注目されていないのかも知れない。

まぁ、在特会だの行動する何鱈などが文章にするくらい悍ましい差別的言辞を吐くのが、マスコミにまで取り上げられ流行語にさえなったのは一歩前進(?)なのかも知れないが、こうした「ヘイトスピーチ」と同様に自分たちと違うと思う連中を兎に角排除したがる性向=「排外主義」(ショービニズム)ってのは、(以前から根があったとは思うが)ここへ来て結構あちこちで目につく様になっている。

何故こんなことを指摘したのかと言えば、ここ最近大企業優遇への批判に絡ませて株主の「多国籍化」ってことが指摘されていたのが気になったのだ。曰く「外国人投資家であれば、日本の将来などどうでもよく、日本人労働者をリストラして出した利益を自分達のものにしたら、あとは使い捨ててもよい程度に考えているかもしれない」成る程。確かにそれは一面の真実ではあるのだろう。こと経済のグローバル化とかやらで大多数の人間が苦境に陥っている現実を思えば、説得力を持ったりもする。

しかし、中国・韓国と外交や領土問題などギクシャクする一方、他方で「対米追従」を非難する動きも盛んとなり、ウヨ・サヨ問わず「排外主義」の風潮が何時の間にか受け入れられつつある観がある様に自分には思えるのだ。

しかしながら、だ。そもそもその外国人投資家というのか「多国籍化」した株主ってのは、果たして誰が出した金なのかってのまで考えると、実は日本人の金でしたってのは結構あり得る話だったりする。店頭で売られていたりするファンドの目論見書とかを読むと判るが、そうしたファンドの所在地は実は日本国内で無かったってのは結構あったりするし、そういう「外国籍」の金融商品を買ったりしている金融機関やら年金基金やらも少なくない。まさにおゼニは巡り巡って一蓮托生だったりする訳だ。

まぁ、仮にそうしたことを認めた上で、だから「外国人投資家であれば、日本の将来などどうでもよく利益を自分達のものにしたら、あとは使い捨ててもよい程度に考えている」って言うのが何が悪い!ってことになるのだが、それとても果たして日本人だったらそんなに温情(?)なことをやっていたか?というのには疑問符がついてしまう。

例えば、投資相手の労働条件や環境対策など所謂企業の社会的責任に鑑みた「社会的責任投資」に先鞭をつけたのはアメリカだった。かつての朝日ジャーナルでもその「社会的責任投資」を担う市民団体が取り上げられていたが、その中には「アパルトヘイト政策をとる南アフリカとの取引」(!)って項目があり、それこそ昨日今日のぽっと出ではない時間の蓄積を感じられてしまう。そればかりか、バブル期の日本企業は「社会的責任投資」では槍玉に上がることすら多く、訴訟を起こされたり賠償金を課されたりすることさえあったのだ。

翻って日本企業を見てみよう。小泉の「聖域なき構造改革」以前の御時世では、日本企業は大概内輪で株式を持合っていて外資が割り込もうものならそれこそ官民挙げての(それも表立ってではない強かなやり方で)排除に動くのが常だった。じゃぁ、日本企業に問題は起きなかったか?公害は?過労死は?みんな日本企業で起こったことだ。もっとも「構造改革」を経てこうした状況には変化が起き、ご指摘の通り株主の「多国籍化」は進んでいる。ならば、仮にこうした「多国籍化」に歯止めをかけ日本人投資家ばかりになれば日本の将来を考えてくれるってなるだろうか?到底そうは思えない。内田樹センセ曰く「辺境国家」日本のこと、矢張り内輪の論理でなぁなぁとなり、下手すると今よりも状況が悪くなりこそすれ良くはなるとは考え難い。

昨今、世界を不幸にするグローバル化とかいう現実が多くの人々に知られてきた反動だからか、いわば反グローバリズム(ポスト・グローバリズム)とか保守左派とかの看板を纏って、欧米なら間違いなく排外主義や新右翼の主張みたいなのが結構受け入れられたりする(前述の内田なぞその典型だ)のだが、そういう人達に自分はこう質してみたい。


「あなた方が兎角非難している所謂『ブラック企業』の多くは、株主も経営陣も果てはお客様まで日本人だけなのが多数派ですけど?」

【杉山真大@震災被災者】


[編集部より]
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