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格差社会と教育格差(貧乏人にリベンジする機会を与えろ!)

まっとうな職業に就くには、大学を出たりそれなりに専門的なことを勉強しなくてはならない。教育の機会というのは子ども達に平等に与えられるべきだ。親が裕福なおかげで進学塾に通い難関大学や有名私立大学を出て出世コースを行くものがいる。その一方で、才能はあれど、経済的に苦しい家庭に生まれて、進学すら難しいものがいる。今回のテーマは「格差社会と教育格差」である。

1.借金して大学を出る日本人

ぼくは高校・大学と私立だったので結構金が掛かった。
大半は奨学金を借りて払ったのだが、手元の資料を見返すと

高校: 734,000円 11年払い 年間66,800円
大学:1,575,000円 9年払い 年間158,148円
修士:1,800,000円 20年払い 年間90,000円
-------------------
合計:4,109,000円

なんと高校から修士をとるまで400万円以上も借金していた。
就職してからの返済が、これまたたいへんで、初めのうちは年間31万5千円ほどになる。
半年ごとに払っていたから、ボーナスのたびに16万近い金が出て行くのだからたまらない。
さらに運の悪いことに、ぼくは社会人になって5年後に病気をして、その後数年してその会社を辞めてしまった。まともな収入はなく、しばらくは返済(*1)にひいひい言いながらも返済していた。
ぼくのケースはちょっと極端だけど、奨学金の返済に苦労している人は結構多いのではないだろうか?ちなみにぼくの奨学金返済は2013年に終わる。

2.弁護士も金持ちしかなれない??

昨年、弁護士さんが、司法試験合格後、弁護士になる前に1~2年の「司法修習」という研修を受けてたときに支払われる研修費(月20万円程度)が打ち切りになるというニュースがあった。結局一年延長が決まったようだが、一年後には打ち切るという。

中部経済新聞2011年1月掲載
修習生の給費制一年延長
http://www.aiben.jp/page/library/chukei/c2213-03.html

弁護士になるためには相当勉強しなくてはならないが、金も相当に掛かる。法科大学院生の多くが400~700万円の借金を背負っている。さらに研修期間の給料が出ないとなれば、いったいどれくらいの人たちが、弁護士になれるのだろうか?これは医者の研修医時代には無給で働けと言っているのと同じことなのだ。こんなのむちゃくちゃだとは思わないだろうか?結局これでは、お金持ちしか弁護士になれない。このようなお金持ちの弁護士が、われわれ弱者の立場で、弁護できるのか疑問だ。

3.エリート高校に行くのは金持ちだけか?

いつだったか、大阪の橋下知事が「超エリート高校構想」なるものをぶち上げていた。そういうエリート高校に入れるのは、早くから塾に通わせるだけの経済力をもった家庭の子どもが圧倒的に多いだろう。こういうのを見ると、かれらの自由な競争とは、金持ちにとって有利な"自由な競争"と言う気がする。

4.新自由主義によるエリート思想

こうして高い学費をかけて、超難関大学に入り卒業していくエリートの中には、「自分の金で難関大学を出て、自分で金を稼いだのだから何が悪い!」と言う人もいるだろう(みんなが全部そうだとか言っているのではない)。彼らが将来企業のトップや官僚のトップになれば、彼らの考えることは目に見えている。大企業のトップになれば、安い賃金の派遣労働者やパート労働者をモノのように使い捨てる。官僚のトップになれば、庶民の暮らしよりも自分の省庁の利益を最優先にするだろう。
自費で高い学費をかけて、難関大学を出たのだから、彼らは自分達の権利は当たり前だと思っている。自分達の給与に高額の所得税をかけようものなら「日本は努力した人が一番損をする社会だ!」と平然と彼らが批判するのはこういう背景があるからだ。

5.社会に還元する欧州の思想

もしこれが、欧州(フィンランドやスウェーデンなど)だと、大学を出るのは国のお金でタダで出れるのだから、まともな職業につきたければ大学に行くことになる。フィンランドなどは学力レベルは世界的にかなり上位にある国だ。
大学を出るまで国の金でやっているから、彼らは社会に出たらそれは社会(国)に還元しなくてはならないと考える。みんなが誰かのために働いている。「私はあなたのために、あなたは私のために・・・」そういう感覚を欧州人は持っているから、高い所得税金を払っていても誰も文句も言わない。フィンランドはなるべく優秀な人材を育てて、優秀な納税者を増やそうと言うのが国の考えだ。驚くかもしれないが、フィンランドではテレビにバラエティ(*2)がない。討論番組やドキュメンタリーやニュースを家族で見て、「勉強をして、学力をつけておかないと昔のようにスウェーデンやロシアの領土になってしまうぞ」と教えるわけだ。
日本人のようにテレビでバラエティをみて喜んでいるのとは大違いだ。

まとめ

今まで話したことから

貧富の格差 => 学力格差 => 負のスパイラル

と言う図式がわかるだろう。こうして、日本人の知識レベルが二極分化していく。それは貧富の格差の二極分化でもある。一度このスパイラルにはまり込むと、貧乏人はなかなか上に這い上がれない。ぎゃくに金持ちは金持ちのままだ。これはオリンピック選手だった親の子どもから、次のオリンピック選手を選ぶようなものだろう。お金持ちにとって脅威なのは、貧乏人が学力・知識をつけて、這い上がることだ。大企業エリートも官僚エリートも、労働者や国民が学力・知識がないほうが扱いやすいと思っている。彼らエリートにとってそれはいいことかもしれないが、日本人の知的レベルはどんどん下がる一方である。これが日本の国益のためになることだと思う人はいないだろう。

最近では、上海の子供たちが学力調査でトップに立った。どこの国だって、子どもへの投資が一番確実なリターンを得られる事を知っている。しかし、これは親の責任でおこなうのではなく、国の責任でおこなうべきだ。日本人の富裕層による既得権益のために、日本そのものがだめになっては本末転倒。教育の機会と言うのは子ども達に平等に与えなくては国が滅んでしまう。

・参考リンク
文部科学省「特集1 我が国の教育水準と教育費」
http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/html/hpab200901/detail/1296703.htm

【Takky@UC】

*1:病気や失業をすれば、返還猶予も可能
*2:富裕層が日本をダメにした1「お金持ちの嘘にだまされるな」和田秀樹



[編集部より]
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■ Comment

No title

市場原理を否定するわけではありませんが、世の中のあれこれ全てに市場原理を持ち込むことには反対です。多くの先進国では教育や医療が公共の福祉として認識され、国民全員に無償もしくはほぼ無償で提供されていますが、それで社会が衰退したという話は一つも聞いたことがありません(少なくとも日本ほど市民が不幸になっている国はありません)。むしろ、教育を市場財とみなす日本より、ずっと優れた社会制度を築き上げたといえるのです。

教育や選挙にはカネがかかるといいますが、なぜでしょうか。そして、カネがかかることが悪いことだという認識があれば、なぜそういった制度を変えようとしないのでしょうか。ぼくは、日本の金銭負担が大きい教育や選挙の制度は、意図的に維持されてきたのだと考えています。それに怒り、声を上げる国民がいなければ、日本はずっと今のままです。

No title

教育や社会保障に対する「応益負担」論に端的にあらわれているように、
医療や教育を受けるという、基本的人権としての「権利」と
お金などとの交換によって発生する「権利」(私権)を
混同しているのがいわゆる「新自由主義」の悪いところだと思います。

そういう目で見れば、例えば税金をたくさん払っている家庭の子どもと
そうでない家庭の子どもが同じ教育を受けるのは「不公平」と思える
でしょうし、またそれを認めるとしても、貧しい家庭の子どもには
多額の借金を背負わせて「人並みはずれて努力する」「真面目である」
などの「対価」を求めることになるかと思います。
そして、その成果、つまり獲得した知識や技術をもっぱら
「私有財産」として、自分のためにのみ使うことは当然、
教育にかけたお金をその後に回収するのは当然、という
考え方になります。
そこに、社会とか協同とかの考え方はありません。

また、つきつめて考えれば、これは「お金を払う人が絶対的に
偉い」、という考え方にもなります。
モンスターペイシェントなどの問題は、実はこういうところに
起因しているのではないかと思います。

教育は単なるサービスではなく、教育を受ける権利は
対価なく保障されるべき基本的人権であること、
その費用は、社会的に負担されるべきものであり、また
その成果は社会的な財産として社会に一定還元されるべき
ものであることを明らかにしていかなければと思います。

私は医療機関で勤務していましたが、
医療や福祉についても、同じことが言えると思います。
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 「鍋党」(Nabe Party)の参加者がつくるブログです。
 「鍋党」は、再分配を重視する市民の会です。私たちは、格差の縮小と貧困の解消を目指し、国や地方公共団体による、富の再分配の強化を求めます。そのため私たちは、「官から民へ」ではなく、「私から公へ」を追求します。

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