復興財源の軸を「消費税増税」にする政府案は論外だ。経団連と神野直彦氏の提言を紹介する
http://www.asahi.com/politics/update/0416/TKY201104150577.html
復興財源、消費増税が軸 数年間の時限措置 首相が意向
2011年4月16日5時8分
東日本大震災の復興財源について菅直人首相は消費増税を軸に検討する意向を固めた。消費増税は数年間の時限措置とし、被災地復興に充てるため増発する国債の償還財源と位置づける。6月に第1次提言を出す首相の諮問機関「復興構想会議」でも、増税論議を深めてもらう考えだ。
ただ、消費増税分を復興財源に充てることには民主党内でも慎重論がある。野党でも、自民党は国債発行を主張するが、償還財源については明確に示していない。このためすぐに消費増税の道筋がつくかどうかは現時点では見通せない。
枝野幸男官房長官は15日の記者会見で、増税の必要性について「復興に向けて巨額の資金が必要なのは共通認識」と強調。復興構想会議議長の五百旗頭真(いおきべ・まこと)防衛大学校長が「震災復興税」を提起したことに対し「会議の皆さんに考え方を提起していただく中で政府として最終判断をしていく」と語った。
菅政権は、4兆円規模の2011年度第1次補正予算案は国債増発に頼らない方針だが、これを大幅に上回る規模の第2次以降の補正では国債増発も容認する。その際、首相は償還財源もあわせて検討する意向で、課税ベースが広い消費税を念頭に制度設計に入る考えだ。
政権は現在、2~3年間の時限措置として、現在5%の消費税率を1~3%引き上げることを検討している。税率1%で約2.5兆円の増収となり、増税分をすべて復興費に充てる算段だ。ただ、消費税は地域を分けて増税することが難しく、被災地の個人や企業も負担増は避けられない。このため、一定額を被災者に還元する案、復興目的を明確にするため「復興債」を別勘定にして消費増税分を償還に充てる案――などが検討されている。
増税措置は数年間の時限措置とする考えだが、その後も税率を維持して社会保障費用に充てる狙いもある。政権内には「消費増税はあまねく負担を求めることになるが、後に福祉目的税にシフトさせやすいという考え方もある」(政府高官)との意見がある。
消費税のほか、所得税や法人税の増税も検討対象だ。ただ、5~40%の6段階ある所得税率を各1%引き上げても税収増は約1兆円。負担が現役世代や会社員など給与所得者に偏る面もある。法人税は08年のリーマン・ショック後に税収が半減するなど安定しておらず、10年度の見込みは7.4兆円程度にとどまっている。
またしてもちらつくのは与謝野馨の顔だが、この与謝野を入閣させた菅直人の罪は極めて重い。原発問題では菅直人の方が小沢一郎よりまだマシだと思うが、税制に関しては菅直人は最悪だ。小沢一郎はもちろんこの件でも菅を批判するだろうが、その場合は私は小沢に与する。
当ブログ読者の皆さまには、3月31日付の朝日新聞にこんな記事が出ていたことをご紹介する。
http://www.asahi.com/special/10005/TKY201103310127.html
経団連「復興へ、必要なら時限的な増税も」 政府に提言
2011年3月31日10時52分
日本経団連は31日、東日本大震災からの復興に向けた緊急提言を発表した。被災地の復興を全国民で取り組むため、必要であれば所得税と法人税の時限的な増税も検討すべきだとした。
復興財源は、高速道路無料化など現政権の目玉政策の見直しで充てるのが先としつつ、新年度からの法人税率引き下げの見送りを容認。それでも足りない場合は、時限的な増税もあり得るとした。さらに、政府に強力な司令塔を確立するため、震災復興庁(仮称)の設置を求めた。
東京電力管内で今夏予想される電力不足への対策では「(政府による)電力使用制限がないように、経済界の意向を体した行動計画が非常に重要」(米倉弘昌会長)として、4月中に業界ごとの節電対策である自主行動計画をまとめる方針を打ち出した。
この経団連の提言には消費税の増税は含まれていない。これは何も、別に経団連がこの非常時に良心を取り戻したからこういう提言をしたのではなく、「今は持てるものから多くを失った東北に再分配を行う方が、企業の損益にとってもプラスになる」という「資本の論理」に従って、まず自らが身を切る経団連の提言が出てきたのだ。東北がいつまでも復興できなければ、企業の損益にも悪影響が出るのである。ところが、この期に及んで菅政権は消費税増税を軸とした復興財源などを考えている。論外だ。消費税増税だと被災地で多くのものを失った人々にも負担が及び、東北の復興が遅れる。与謝野馨は富裕層や大企業のための政治を行う立場の人間なのだろうが、これは与謝野が便宜を与えているつもりの企業にとってもプラスにならない政策なのである。
菅政権の、というより日本政治の癌である与謝野馨は、何が何でも復興のための赤字国債増発は行わず、昔からの持論である消費税増税に鬼のような執念を燃やしている。度重なる「原発推進」発言といい、今の日本の政治をもっとも悪くしている人間がこの与謝野馨だ。
復興財源を国債だけに頼らず、増税も行えと主張するのは神野直彦氏だが、法人税と所得税の増税を軸にせよと『週刊東洋経済』4月16日号で主張しているので、以下に紹介する。
神野氏は、「経済を見る眼」というコラムに、「連帯基金と連帯税で分権的復興を」というタイトルのついた文章を書いている。これだといかにも神野氏が消費税の増税を主張しているように見えるが、読んでみるとそうではなかった。
コラムの後半部分から引用する。
東西ドイツ統一の際に、東ドイツの財政支援のために設置した「統一基金」や「連帯税」に学び、時限的に「連帯復興基金特別会計」を設置し、「連帯復興税」を導入すべきである。連帯復興基金特別会計は、連帯復興税とこの特別会計が起債する「連帯復興債」とで資金を調達する。その資金は中央政府の復興事業だけではなく、地方政府の復興事業への財政支援に充てる。
連帯復興税は、被災地の負担増を回避するためにも、所得税や法人税などの直接税が中心とならざるを得ない。ドイツの連帯税では、所得税と法人税の税率が引き上げられた。
しかし、日本では非常時の「連帯」として、税制の優遇措置をまず廃止すべきである。つまり、租税特別措置など既存の政策税制措置を原則として廃止し、あくまでも被災地や被災者への減免措置に限定するように再編する。税率の引き上げも、配当・譲渡益に対する軽減税率を本則税率に戻すことなどを優先すべきである。
さらに連帯復興税として、この日常時に控えるべき行為に課税する「消費行為税」を創設してもよい。電力使用量への電気税や、ネオンサインへの広告税、あるいは遊興・娯楽への課税などが考えられる。
関東大震災では苦い教訓もある。復興財源のすべてを国債に求めた結果、緊縮財政への転換を余儀なくされ、デフレを深刻化させて、金融恐慌を招いている。こうした歴史的教訓からすれば、今回は復興財源を国債にのみ依存するのではなく、増税と組み合わせた財源調達を選択すべきである。
(『週刊東洋経済』2011年4月16日号掲載コラム「経済を見る眼」・神野直彦「連帯基金と連帯税で分権的復興を」より後半部分)
この神野氏のコラムでは、連帯復興税に消費税増税を含ませることを否定する文章が含まれていない点に不満を残すものの、法人税及び所得税の増税を行え、税制の優遇措置を被災地・被災者への減免措置を除いて廃止せよ、株式優遇税制も元に戻せ、等の一連の神野氏の主張には私も大賛成だ。
復興の過程で、「富の再分配」を行うことによって東北の復興を促進し、日本経済を活性化させなければならない。われわれ日本国民は、与謝野馨や「減税日本」(その実体は「強者への逆再分配日本」)の河村たかしのような我利我利亡者の手から「政治」を奪い返さなければならない。
【kojitaken】
[編集部より]
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